朝日新聞より |
日本も大波をかぶるだろうが、悪いことばかりではない。これまで日本は貯金通帳の数字
だけ大きくなり、そのカネを使っているのは米国人という構造だった。これでは日本の内需は
湿るばかり。米国の集金装置が壊れ、日本人のカネを日本で使う時代になった。カネを国内で使って豊かになる仕組みを考えること、それが課題だ。
常識を逆転させる発想が必要だ。給料を抑え、自国通貨を安くして輸出に頼る「貧乏輸出」
をやめる。上場企業は6年続け増収増益だが、国内経済はパッとせず、消費は冷え込んだままだ。ゼロ金利で企業は助かったが、預金者は大打撃を受けた。カネを回すべき先はたくさん
ある。医療・介護など手厚い社会保障は雇用吸収力がある。高齢社会での安心確保という切実な需要がある。石油に変わる新エネルギーや環境に負荷のかからない循環システムなど21世紀の課題に国を挙げて取り組めば、新しい需要が創造される。
29年の世界恐慌が行き着いた先は第2次大戦だった。戦争という巨大な需要で米国は不況を
克服し、世界の中心に腐り出た。歴史の繰り返しがないとは〉限らない。戦争による乱費か、
石油文明に代わる環境・新エネルギーで新たな需要を創造するか。「世界不況」は人類を試す
ことになるかもしれない。
