製品開発■著名デザイナーと 日経新聞 |
山梨県の和紙メーカー、大直.(市川三郷町)は八月、和紙を逆さ読みした「SIWA」(しわ)ブランドのかばんなど二十製品を発売する。和紙の持つ質感と、ほのかに明るい色合いが特徴だ。人形や置物の老舗メーカーの同社にとって生活雑貨の製品化は初めて。一瀬美教社長は「社内のデザイナーでは作れない製品」と手応えを語る。.
SIWAシリーズには、通常の障子紙の5倍の弓重度がある和紙が使われているデザインを手掛けたのは深沢直人氏。良品計画の「無印良品」のデザインを手掛け、国際的に評価の高いCDプレーヤーはニューヨーク近代美術館に永久収蔵された。
水栓関連機器製造の三栄水栓製作所(大阪市、西岡利明社長)は三十-四十歳代を意識したデザインの製品を開発しようと、シャープの液晶テレビ「アクオス」のデザインを手掛けた大阪出身の喜多俊之氏と組んだ。今春の新製品「KiW・11ap」はその成果だ。ユニバーサルデザインを意識し、水滴がたまりにくい構造を採用。ニュージーランドの国鳥キウイに似た形になり、ブランド名に反映した。
伊高級車フェラーリのデザインで有名な奥山清行氏と組む絨毯(じゅうたん)メーカーのオリエンタルカーペット(山形県山辺町、渡辺博明社長)は三年かけて生産手法を見直し、低価格品を開発した。同社の製品の納入先は皇居やバチカン宮殿などで、価格は六畳で五百万円程度。販路開拓が難しく、バブル崩壊後は業績低迷が続いた。奥山氏は「品質を落とさず価格を百万円以下にするものづくり」を提案。職人に作品イメージと希望価格を伝えた。最初は「技術的に無理」 「費用に合わない」と拒まれたが、徹底的に意見を交わし、費用と時間のかかる工程を見直した。
中小との連携大手にない魅力工業デザイナーは中小企業を、大手にない魅力を持ったパートナーととらえている。深沢氏は大直との提携を「欧米企業と作業する感覚に近い」と表現する。海外では「一つの製品に三年かけることもある」といい、「技術にこだわりがある中小との仕事は面白い」。喜多氏も「関西の会社と、もっと成功例を積み上げたい」と意欲的だ。奥山氏は「中小がデザイナーと組むなら、その会社と三年付き合う覚悟を持つ人を選ぶべきだ」と忠告する。
中小と組む工業デザイナー
深沢 直人氏(ふかさわ・なおと)、山梨県出身。80年(昭55年)多摩美術大卒。米デザイン会社を経て03年にナオトフカサワデザイン設立。
喜多 俊之氏(きた・としゆき) 大阪府出身。64年(昭39年)浪速短期大(規大阪芸術大短期大学部)卒。イタリアなどでの制作活動を経て、02年に大阪芸術大教授。
奥山 清行氏(おくやま・きよゆき) 山形県出身。82年(昭57年)武蔵野美術大卒。伊デザイン会社ピニンフアリーナなどを経て06年ケンオクヤマデザイン設立。