小児ケア、担い手は「環境」 |
「親として、めざましく変化する子供の可能性に日々驚かされている」。私が会長を務め、五月末に開催した日本小児神経学会総会に出席された皇太子さまのお言葉である。この言葉の通り小児期の発育、発達はめざましいが、一方で子供の変化は環境に大きく依存している。
最も大事なのは保護者。育てにくいと感じ「発達に問題があるのでは」と受診させた子供の中には、大人のよ}ブな振る舞いを要求され、常に評価され、注意され、極度の緊張状態にいる場合がある。
文明社会に生きる我々は、ややもすると世の中の出来事すべて、育児さえも制御可という錯に陥る。特に向上心が強く自らを切磋琢磨(せっさたくま)する人にその傾向が強い。だが乳幼児と家庭で向き合う時はあったかーいお父さん、お母さんでいることが必要なのだ。
母性は自然にわき上がる感情、無言の愛。生まれたての赤ちゃんをそのまま受け入れる愛。父性は一歩前に踏み出す勇気づけ、高い所へ共に歩こうという、呼びかけの愛。
母性と父性の順番が重要で、母性が十分与えられることが建築の土台を作り、初めて外の世界とかかわれる。
小児のケアを担うのは医師だけではない。保護者や学校、ゲームやメディアさえも、子供を取り巻く環境すべてが「チーム医療」の一員である。
周囲の地味だが献身的支えが必要なのだ。相田みつを氏の言葉「くさびだから一番大事なところへうつ。くさびだから、見えないようにうつ。」が身に沁(し)みる。