60歳から家を建てる NO2 |
這ってでも行けるトイレ
だから高齢者用のトイレは寝室のすぐ隣でできれば寝室との間を引き戸で仕切るとよい。引き戸を開け放しておけば寝室と一緒に暖房できるし、這ってでも行けるからである。
転倒や、転落を要望するためには手すりのデザインと取り付け場所が重要である。あまり手すりが多すぎても良くない。表面がつるつるした金属性の手すりは石けんで泡だった手でつかもうした瞬間滑ってバランスを崩しやすい。手すりをつけるなら太くて表面に凹凸のあるもの、例えばゴムを巻いたようなものが良い。
定年になったとはいえ、その先の人生が楽しい事ばかりではない。いきなり老人になるわけでもない。当たり前の日常生活がその先10年の20年も続き、私たちは少しずつ少しずつ年をとっていく。しかし、60歳の時点で住まいのすべてを老人仕様にする必要はない。必要になったときに対応できる準備をしておけばいいのである。
本来木材には無理に塗装する必要はない。ニスもペンキ塗らなくていい。降った雨が流れ落ち、室内や壁の内部に湿気こもらない設計になっていれば、木は簡単に腐るものではない。時とともに枯れていくだけである。
昔の家はみなそうだった。だからこそ私たちは古い神社仏閣の建物を見て美しいと感じるのではないか。
住む人と一緒に朽ちはてるはてる家ではなく、その人とともに美しく老い味わいを増していく家。60歳から建てる家はそういう家であって欲しい。