建築家 隈氏 日経新聞 対談 |
う。・・・・・日本では自然を大事にしながら物を作り、技術を磨き上げる伝統が各地に根付いているのだと思う。
●平和のために
大原 文化は戦争に対して力を持ちうるのか。日本を「磨く」ことは、世界の平和のためになり
得るだろうか。
高萩先ほど言ったように、日本は島国の中で何とか調和を保ってやってきた。大半の先進国では勢力が対立すると亡命したり、人が大量に移動したりした。しかし日本の場合、開拓移民などを除けば、この国から大量に人が出て行ったことはほとんどない。それほど遠くないところに韓国や中国があるのに、出て行かずに日本の中で調和を保ってきたというのは、そこに何らかの知恵があったのだと思う。
隈 欧州企業と仕事をすると、文化が空理空論ではなく、極めて実体的な力を持っていると感じ
る。たとえば今ブランドの世界では企業買収の嵐が吹き荒れているが、そこでは企業の持つ文化力が、買収金額を算定する上で大きな要素になっている。それぐらい文化はリアルなんだということを、日本人はもっと骨身にしみて学ばないといけない。戦争に対しても、欧州はここ数世紀、戦争抑止に文化がどのような力を持ちうるかを学んできている。
大原 文化を学ぶことは寛大になることであるといえる。私たちは日本の文化を学ぶと同時に、
それを単なる「日本回帰」にせず、あまり観念的にならず、世界とのつながりを保ちながら日本の文化を磨いていく。それがこれからの私たちに求められる態度なのだろう。