多事奏論 表現の自由「権力なんかないよ(笑)」に震える 高橋純子 |
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2019年 08月 22日
表現の自由「権力なんかないよ(笑)」に震える
彼は流しそうめんのように掴みにくい男だったー。連休初日の8月10日。札幌・大通公園で私の脳裏になぜ「吉里吉里人」(井上ひさし)のー節が浮かんだかというと7月の参院選のさなか街頭演脱に立った安倍晋三首相に「安倍やめろ!」とヤジを飛ぱしたらすぐ警察官に取り押さえられてササーツとその場から排除されたソーシャルワーカーの男性(31)が自身のその時の状熊「最近家でやった流しそうめんのようだった」と表現してみせたからだった。 この日、北海道警察に抗議しようと企画された「ヤジも言えないこんな世の中じゃ・・・」デモ。黄色い横断幕の端っこを持ち、「道警謝れー、」と笑顔でコールしている大学4年生の女性(24)も、「増税反対!」とヤジった途端に囲まれ腕をっかまれた。 「法律犯してないのにヤバクない?」警官に引っ張られながら、周囲に聞こえるように、「助けて」という思いを込めて声を上げたが、遠巻きにただながめられた。中にはスマートフオンで撮影している人もいて、警察ではなく「自分がヤバイやつ」と思われていることに気づいた。 1時間ほど模数の警官につきまとわれた彼女は、自身のスマホで動画を撮った。 「(私たちに)権力なんかないよ(笑)」 「(あなたと)ウインウインの関係になりたい」「ジユース買ってあげる」 警官の発言の軽さ。なれなれしさ。市民の自由を抑圧してかる自覚はたぶんないのだろう。無自覚でカジユアルな権力行使は、自覚的なそれよりある意味おそろしい・・・・・はい。同様のことは、名古屋でも。 彼はきしめんのように薄い男だったーとはおそらく誰も書いてないが、名古屋市の河村たかし市長は、国際芸術祭ーあいちトリエンナーレ2019」の企画展一表現の不自由展·その後」で展示されていた少女像の撤去を求め、「日本人の心を踏みにじる」「表現の自由は相手を傷っけないことが絶対(条件)」などと語ったという。 この認識がいかに浅薄かはさんざん指摘されているので繰り返さないけれど、もうずいぶん前のこと、被爆地の千羽鶴が燃やされたんだったかモニユメントが壊されたんだったか、そんなような事件があり、テレビのニユースキヤスターがー悲しい」とコメントしたことをふと、思い出した。 確かに悲しい。しかしキャスターという立場の人がそういう次元で勝負するのは危ういと感じた。ただ、何がどう危ういのかは深く掘り下げないまま今日に至っていたのだが、今次の河村発言をかぶせて考えてみると、おばろげながら見えてくる。 愚かな戦争を始めたこと。内外に甚大な被害を与えたこと。痛切な悔恨と反省が、戦後の日本、日本人にタガをはめ、善悪正邪のラインをくっきりとさせていた。 だが戦後も七十余年が経ち、メンテナンスの悪さも相まってタガはすっかりゆるんだ。それに乗じて、「戦後レジームからの脱却」を唱えるお歴々が新たなラインを引きまくり、踏みにじった側がのびのびと、ちゅうちょなく「踏みにじられた!」と言い立てるようになった。 悲しい。傷ついた。踏みにじられた。これらの主張は重い。強い。言われた側は「申し訳ない」と謝罪するか、「そんなっもりはなかった」と弁明するか、そうでなけれぱ無視を決め込むか、取り得る手立ては限られる。ゆえにかれらは被害者が自身を守る「盾」としてしか使えなかったはずなのに、いまやカギカツコをかぶった「被害者」が、気に食わないものをぶった断るための「剣」として便利に使っている。しかも「主語を「日本人の心」まで肥大化させれぱ、およそ斬れないものはない。 一億総活躍ならぬー億「総被害者」社会。そうめん、きしめん、まっぴらごめん。 ふう。夏休みの自由研究はひとまずここまで。2学期はもっと勉強に励みます。 そもそも、安倍さんという方は、野次るのを率先してやってましたよね、それなのに、自分が野次られるとビビってしまうのか、受け流す余裕がないのか、なんか情けないです。 それを忖度する人が出てくるのが怖いです。 いろいろな立場の方が、いろんなことを言う、そして、それを笑いながら、笑う必要はもちろんないのですが、一旦は受け入れながらも、同調するもよし、反論するもよし、そんな社会になって欲しいと思います。
by nandemokoukisin
| 2019-08-22 11:08
| 気になった論、ことば
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