老いる家 崩れる街ー過剰住宅社会の末路 野澤千絵著 |
その中で、解決策の一番目に挙げていたのは、
①自分たちのまちへの無関心・無意識をやめる
でした、これがまた、難しいのでしょうけど、これがなければ本物にならないでしょうね!
本の中から
・わたしたちは、「人口減少社会」なのに「住宅過剰社会」という不思議な国に住んでいます。住宅過剰社会とは、世帯数を大幅に超えた住宅がすでにあり、空き家が実に右肩上がりに増えているにも関わらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼畑的に広げながら、住宅を大量に作り続ける社会のことです。
・問題なのは、新築住宅が居住地としての基盤(道路や小学校・公園など)が十分に整っていないような区域でも、いまだに野放図に作り続けられ、居住地の拡大が止まらないことです。
・一方住宅を購入する側も、「住宅資産」と考える場合が多く、賃貸住宅で毎月、多額の賃料を支払うよりも、住宅ローンで購入すれば、住宅ローン減税といった優遇措置も得られるなど、様々な点で有利だと考えがちです。不動産会社の広告によるイメージ戦略や巧妙な営業トーク力も相まって、新築住宅の購入を決める方々が多いのです。
・要するに、過剰住宅過剰社会では、資産としての住宅の有用性が根本から揺らぎ始めており、住宅が資産とされたこれまでの時代とは全く異なると言う事実を直視すべきなのです。
・野村総合研究所によると、このまま空き家になった住宅の除却や住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2013年に約820万戸の空き家が、10年後2023年には約1400万、空き家率は21.0% に、20年後には約21,50万戸、空き家率は30.2%になると予測されており、3戸に1戸が空き家と言う将来が待っています。8ページ
・新築住宅が、居住地としての基盤が十分に整っていないような区域でも、いまだに野放図につくり続けられ、居住地の拡大が止まらないことです。
・要するに、住宅過剰社会では、資産としての住宅の有用性が根本から揺らぎ始めており、住宅が資産とされたこれまでの時代とは全く異なると言う事実を直視すべきなのです。
・住宅過剰社会の流れを止めなければ、私たち自身や将来世代に様々な影響が降りかかってくる事は確実です。 16ページ
・デベロッパー側も、分譲形態にすると、賃貸にする場合に比べて短い期間で土地取得費や建設費などの初期投資費用が回収できる、住宅を引渡した後の維持管理の主体・責任は購入者側に移るために将来的なリスクを回避できるなど、メリットが大きいのです。そのために、「売れるから建てる」と言う流れが加速するのです。28
・人口増加を目標に掲げて、本来、市街地に市街化を抑制すべき区域である市街化調整区域の農地エリアで都市計画の規制緩和を行っても、市内や圏域で人口を奪い合っていただけで、転入者の増加をもたらす効果は限定的だったと言うことなのです。
・賃貸アパートの建設が止まらない。
更地に賃貸アパートを建設すると、更地状態の場合や、マイホームを建てた場合よりも、相続の際の土地の評価額が下がるため、相続税の節税に有効と言われています。また建物が賃貸されている場合、持ち家などに比べて評価額が下がるために、固定資産税の軽減に効果的と言われています。さらに家賃収入があれば、納税のための資金として確保することも可能になります。
・市内アパートの大幅な増加により、市街化調整区域における低入居率のアパートの発生や、市街化区域におけるアパート経営の圧迫、また、「空き家問題」としての、「空きアパート問題」の発生と、あらたの課題も心配されます。
・再自然化し始める住宅団地/所有者の不在化・不明化問題/隣地買い増しに取り組む地元不動産屋/駅に近いほど空き家率が高いと言う不思議
・もっとも厄介なのは、住宅や住宅地をつくることは「計画」できるのに対し、住宅の使い捨てとうのが、まちのどこで、どのくらい発生しているのか事前に予測できない、つまり、「計画」できないという点です。
・日本の都市計画や住宅政策が、受託供給や市場原理に任せたままで、これまでつくってきたまちの新陳代謝を生み出そうという意識や意欲が不足していたという点です。
・規制緩和のゆるさが必要なのでなく、まちのまとまりを形成・維持できるような「立地誘導」こそが、必要不可欠なのです。166
・分譲マンションの終末期問題
日本で初期に建てられたマンションの寿命は、コンクリートの寿命から想定されるいるよりもかなり短く、住み続けるためには、築30〜40年で建て替えが必要となる場合が多くなっているのです。
・限界マンションの大量発生
マンションの老朽化が進み、同時に居住者の高齢化と空室化が進んで管理が行き届かなくなり、スラム化に至るマンションのことを、「限界マンション」と呼んでいます。
・とりわけ、普通のマンションより合意形成がのハードルが高い超高層マンションが大量につくり続けられているのです。
・住環境も老いている〜公共施設・インフラの老朽化問題
住まいや居住者が老いているだけでなく、公共施設やインフラなど、住宅と密接に関わる住環境自体も老いて崩れてゆくのです。
・危険な立地の長期優良住宅
・不便な立地にサ高住ー
・人口・経済の右肩上がりの時代には、満足化の追求という原則ののもと、新規増額分の配分だけが議論の対象でしたが、今後は、何を削減するかが議論の対象になるということです。
・住宅の過剰社会からの脱却するための7つの方策
人口・世帯数の減収・税収減、少子・高齢化と高齢者福祉費の増大、働き手の不足、老いた住宅や空き家の急増、公共施設・インフラの再生・更新問題と挙げたらキリがないほど様々な問題が山積する中で、いよいよ従来型の都市計画や住宅政策から本気で転換しなければいけない時期に突入していることがわかって頂けたと思います。
方策①自分たちのまちへの無関心、無意識をやめる
「将来の世代に負の遺産となる住宅や街を押し付けてしまわないように、「権利」だけを主張するのではなく、町や住まいの維持管理に関わる「義務」があるという意識を持たなければいけないのです。将来世代に今よりもっともっと漁師の町を残そうというポジティブな視点から取り組むことが重要だと思います」
方策②住宅総量と居住地面積をこれ以上増やさない
方策③「其れなりの」暮らしがなりたつ、「まちのまとまり」つくる
方策④住宅の立地誘導のための実効性のある仕組みをつくる
方策⑤今ある住宅・居住地の再生や更新を重視する
方策⑥住宅の終末期への対応策を早急に構築する
方策⑦もう一歩先の将来リスクを見極める