水力発電が日本を救う 竹村公太郎著 |
<抜書>
今あるダムの活用で、年間2兆円超の電力を増やせる
第一に、多目的ダムの運用を変更すること。河川法や多目的ダム法を改正して、ダムの運用法を変えれば、ダムの空き容量を発電に活用できる。多目的ダムの場合、半分しか貯水できない。
第二に、既存のダムの嵩上げをすること。これによって、新規ダム建設の三分の一以下のコストで、既存の発電ダムの能力を倍近くに増大できる。
第三に、現在は発電に使われていないダムに発電させること。砂防ダム等
<抜き書き>
・今は石油がある、原子力がある。そししたエネルギーに頼るほうが価格の面でも、安定供給の面でもよいだろう。だが、石油などは100年後、200年後に本当にあるだろうか。今と同じように安価で手に入るだろうか。現実の資源状況見れば、私のような門外漢にも危ういことがわかる。そんな時代になったら、必ず、水力発電が必要になる。
・水力のプロの私は、純国産エネルギーである水力発電の価値を知っている。日本のダムは半永久的に使える。たとえ100年経っても、ダムは水を貯めている。ダム湖の水を電気に変換できる。しかも、ちょっとでを加えるだけで、現在の水力の何倍もの潜在力を簡単に引き出せる。
・信じてもらえないかもしれないが、実は、ダムを増やすことなく、水力発電量を二倍、三倍にふやすことさえ可能なのだ。
「日本のダムの力は十分に発揮されていない。その実力はまだ、隠れている」
今のダム湖には、水が半分程度しか貯まっていない。それは、法律で決まっているからだ。特定多目的ダム法があり、二つの目的が記されている。「利水」と「治水」である。ダムは、満水の半分くらいしか水を貯めていないことのになっている。
・もっと水を貯めても危険はないのに。洪水予防のためであっても、普段からダムを大きく空けておく必要はない。台風などの大雨が来る直前にダムを空ければ、十分に洪水は防げる。
・国が積極的な姿勢へと転換すれば、ダムに眠っている潜在的な巨大電力を現実社会に活かすことができるのだ。
・高い山、大量の雨、そして川をせき止めるダム。この三つが揃ったときだけ、水は石油になる。
・なぜ、日本のダムは200兆円の遺産なのか
ダムは、半永久的に壊れない、約100年たった古いダムが、巨大地震にさらされても、まったく大丈夫だったわけだが、これは偶然でも例外でもない。
ダムの壊れない理由①ダムのコンクリートには鉄筋がない。鉄筋の錆びのせいで劣化して弱くなってしまう。内部が錆びて脆くなることはない。実は、ダムのコンクリートは、天然の岩と同じなのだ。石灰岩と砂と石が固まっているのがコンクリートであり、成分は、凝灰岩という天然の岩と同じである。ダムが壊れない理由②基盤が岩盤と一体化している。脆い表面の岩を取り除く膨大な掘削工事を続け、新鮮で頑丈な岩盤を表面に出す。そして、その岩盤の上に直接コンクリートを打ち込んで、ダムをその上に造っていく。ダムが壊れない理由③ ダムの厚さが極めて暑く巨大な山となっている。
・多目的ダムは砂が溜りにくい。多目的ダムには、治水という目的もあるので、洪水をダム湖に一時的に貯めて安全な量を下流に放流するための「洪水吐」という特別な穴が用意されている。だから、多目的ダムでは土砂は堆積してします。
・ダムがない水路式発電
・嵩上げは古いダムの有効利用、たった10%の嵩上げで電力が倍になる。
・水力発電のコストは支払い済み
100年後、200年後にこそ貴重になるダム遺産
私は、日本のダムの潜在的な発電能力を引き出せば、理論値7167億kwの30%まで可能だと試算をしている。方策は三つある。
第一に、多目的ダムの運用を変更すること。河川法や多目的ダム法を改正して、ダムの運用法を変えれば、ダムの空き容量を発電に活用できる。
第二に、既存のダムの嵩上げをすること。これによって、新規ダム建設の三分の一以下のコストで、既存の発電ダムの能力を倍近くに増大できる。
第三に、現在は発電に使われていないダムに発電させること。
発電に利用されていない砂防ダム。高さで言うと、主に10mから30mほどの小さなダムである。
・現在の水力発電の電力量は900億kw強であり、理論値7167億kwには、ほど遠い。試算では、運用変更と嵩上げだけで、343億kwの電力量を増やせるとしている。
・さらに、現在のところ発電に利用されていたないダムを開発することは、技術的には何ら問題ないし、再生可能エネルギーの固定買取制度のおかげで、経済的にも好条件となっている。
・仮に、水力発電量が現在より1000億kwだけ、増加したとする。家庭用電力料金では、平均して20円とすると、1000億kwの電力料金は、年間で約二兆円分にあたる。つまりダムとは、この先の日本に、200兆円を超える富を増やしてくれる巨大遺産なのだ。
・水力の国に生まれた幸福
・文明のあるところ、環境破壊あり
奈良盆地から京都への遷都はエネルギー不足が原因
家康が江戸に幕府を開いた理由は豊富なエネルギー、軍事的にも不利で、しかも、未開地だった江戸に、なぜ、家康は幕府を開いたのか?実は、この当時、関西にはもう木材がなかった。これが、家康の決断を理解する重要なカギになる。
幕末は文明の限界だった、江戸の豊富な木材も限界が訪れる。またしても、木材が不足する事態になってしまったのだ。
・多くの人は、こう思っている。「ああ、昔の日本は、きっと今とは違って、緑の豊かな美しい国だったろうに」。ところが、これは勘違いである。昔の日本のほうが、今よりずっと破壊されていた。なぜなら、人々が山という山の木を伐り倒して使い尽くしたからだ。
・エネルギーの量が人口を決める
今の日本では人口が減少傾向にある原因について、明治以来、日本が採り続けてきた化石燃料に頼るエネルギー政策が、限界にきているからという仮説を立てることもできる。くるべき次世代のエネルギーを中心にしたものにならざるを得ない。
・日本にとって、再生可能エネルギーの中心は水力発電となる。水力発電は純国産エネルギーであり、無限であり、無料なのだ。
・電力分散化の時代には中小水力発電が有効
さらに、第四として、砂防ダム・農業用水などにおける1000kw以下の小水力発電が考えられるが、川の権利を定めた法律と、地元で川と元に生活している人々との意識には、ギャップがあるので、 小水力発電は水源地自身がやるしかない。「利益はすべて水源地域のために」という原則のもとに
・日本の近代化では、都市は水源地域に犠牲を強いて、エネルギーを送ってもらい発展してきた。近代からポスト近代に移行するこの端境期の今、安全で、快適で、資金力のある都市は、小水力発電事業で水源地域に手を差し伸べるべきであろう。