格差社会の逆襲 朝日新聞 経済気象台 |
しかし、加速するグローバル経済化や技術進歩ヽそれにもっぱら労働コストの削減で対応してきた日本企業の経営姿勢、政府による労働規制緩和を考えると、格差を生み出してきた大きな潮流に歯止めをかけるのは容易ではない。安倍政権の対応も、選挙向けのスローガンと一時的なバラマキで終わる可能性が大きい。
では格差社会で割を食う中低所得層は、「負け組」であり続けなければならないのか。格差を生み出してきた潮流やメカニズムを変えることはできないのか。否。われわれは自らの選択によって状況や制度を変えることができるし、そのような「逆襲」はすでに始まっている。
アベノミクスは、法人税減税や規制緩和によって企業収益を増やし、雇用・賃金への波及を通して景気が回復することを期待した。しかし、アベノミクス下の経済成長率は民主党政権下の半分であり、足元の景気も一段と停滞感を強めている。最大の誤算は家計消費の低迷である。実質消費支出の水準は、今なおアベノミクス始動時以下である。家計は増えない賃金や不安定な雇用に身構え、消費を抑制している。
思想家の吉本隆明は家計が消費を控えれば企業も経済もあっという間に破綻すると喝破し、家計を顧みない経済政策を批判した。
今の景気停滞は家計の逆襲である。それに真摯に向き合い、格差を生まないメカニズムを考える時が来ている。 (山人)