「おいしい」が生きる力 料理研究家城戸崎愛さん |
食べることは生きること。料理研究家として半世紀以上にわたってテレビや雑誌で活躍してきた、城戸崎愛さん(90)の口癖です。その思いの背景には、度重なる闘病経験がありました。
揚げ鶏のネギソース
《4人前》
鶏むね肉太1枚、鶏もも肉太1枚、長ネギ2分の1本、卵1個、チンゲンサイ2株
①ネギソースをつくる。長ネギをみじん切りにし、しょうゆと酒各大さじ2、砂糖大さじ1、ゴマ油小さじ2とあわせてよく混ぜる。
②チンゲンサイは根元に十文字に切り込み を入れ、塩とゴマ油各少々を加えた熱湯で色よくゆでる。ざるにとって冷まし、食べやすい大きさに切る。
③鶏肉は、中央から左右に厚みをそぐようにしてできるだけ大きく開き、表面を軽く包丁でたたく。
④バットに鶏肉を広げ、酒としょうゆ各太さじ1、ゴマ油小さじ1をふりかけて約15分おく。卵をほぐして加え、さらに約20分おく。別のバットに片栗粉適量を広げ、鶏肉全体にたっぷりつける。
⑤170度に熱した揚げ油に④を広げて入れ、途中で裏返して色よく揚げる。油をよく切ってから食べやすい大きさに切って皿に盛り、ネギソースをかける。チングンサイをそえる。
終戦後、栄養失調と過労から20代前半で結核に。数年間の療養生活を送り、栄養の大切さを実感しました。
29歳で結婚し、食通の夫の勧めで東京会館のクッキングスクールで料理を学ぶようになりました。ところが、結婚2年目で子宮がんと診断されました。当時30歳でした。
入院していた病院での味気ない食事に飽きてしまい、ある日、配膳室を借りて朝食のパンとバター、牛乳、卵で作ったのがフレンチトースト。
病院内で評判になり、看護師さんや医師にレシピを書いて教えたそうです。それから、病院の食事の相談も受けるようになりました。
おいしいものを食べることは自分の力になる。そして、料理をすることで人の役に立ち、喜んでもらえるー
「食」の大切さに気づいたのでした。
60歳のときに糖尿病になってしまい、食生活を見直しました。野菜を中心にした食事に切り替え、低カロリーでもおいしく食べられるメニューを考えました。「病気をしたときでも『おいしい』と思って食べられる。それが何よりいいわけですよね。食欲っていうのは、やっぱり生きる欲だから」
今回紹介する「揚げ鶏のネギソース」は、城戸崎さんの定番料理です。結婚後に、板前さんが開いた出張料理教室に参加して習った料理からヒントを得ました。
鶏肉をからっと揚げ、熱いうちにネギソースをかけていただきます。ゴマ油の香りが食欲をそそり、これまで何度も作って、みんなに喜ぱれてきました。知り合いがアメリカで作ったところ、現地の人たちにネギソースが大好評だったそうです。
「揚げた魚でも蒸した野菜でも、このソースは何にでも合うんです」と城戸崎さん。ネギソースは前日に作って冷蔵庫で一晩、寝かせるのがおすすめです。昧がよくなじみます。(構成・沼田千賀子)