ハウステンボス 澤田秀雄さん |
「1000万球」「100万本」と、多くの人が体感したこともない数を売り物に「一度は見たくないですか」と澤田は人の好奇心を揺さぷりにかかる。花や光の圧倒的な数で人を集める、この王国に澤田が住み始めて3年になる。
09年秋、金融機関や投資ファンドから支援について相談されたが、「やらん方がいい」と伝えた。地元の佐世保市長の朝長則男(64)からも支援を要請されたが、HISの役員は全員が反対だった。
でも「本当にそれでいいのか」という思いが募るのが渾田である。HISを一代で築いたが、76年に毛皮の輸入販売を始めようと最初の挑戦に踏み出してから、思えばそれは失敗の連続だった。
近著『運をつかむ技術』には「失敗することを恐れてチャレンジしなくなることを嫌う」と書いた。〈何とかやれないか〉。ずっとそんな思いを秘めていた。
ある日突然、「市長さんがアポなしで早朝からずっと待っていたんですよ。感動しました」
市長は澤田を「厳しい人。でも優しさもある。どんなに厳しい時にも率先して笑顔を振りまく人でもある」と評する。
市長のひたむきさに共感した澤田は反対論を押し切って、支援へと向かった。
過去の失敗を繰り返したくはない。でも失敗を恐れないーーー。10代の頃から様々な旅を続けてきた澤田がたどり着いだ生きる流儀である。