地方のものさしで価値を発信 梅原真さん |
口々に「ここには何もない。マイナスばかり」と嘆く地方の人々の姿こ、「足元を大事にしていない」と感じてきた。「マイナスはむしろ独自の個性なのに」。デザインは、人々への自分のものさしを持とう。考え方と見方があれば新しい価値が生まれる」という提案でもある。
親交のある日本デザインセンター代表取締役の原研哉さんは「『東京がなんやねん』と高知弁でいい、『こんでええやないか』と、素人が筆で走り書いたような文字で絶妙のパッケージデザインを作り上げるのは一世一代の芸。世界のどこでも通用する」と評価する。
今、東日本大震災の被災地で「しまんと新聞ばっぐ東北プロジェクト」を進めている。仮設住宅や避難先で暮らす被災者が古新聞を材料に新聞バッグを作り、協賛する企業がノベルティーとして購入。売り上げを被災者の収入として還元する構想で、第1弾の協賛は高知の銀行。震災2年の11日から始まる。
実はこれも「沈下橋の向こうの視点」からの取り組み。集落での一斉清掃の日、四万十川沿いの木々にレジ袋が引っかかっていた。「流域の産物は新聞紙で包もう」と提案。以後10年来、流域で制作が続く「四万十川新聞バッグ」が原型だった
キャッチフレーズは「ツクルシゴトツクル」。被災地との関係性は、支援するものと支援されるものではなく「対等」との思いを込めた。
デザインの役目とは、社会構想と問題解決だと考える。「震災に対してデザインが何もできないなんてありえない」。プロジェクトを、デザイナーの「使命」と思う。