豊永郁子さんは政冶との付き合いに倦んだ私たちを叱咤激励する、 |
ー政権交代の成果に心底がっかりしている人が多いと思います、
「国内の政治だけを見ていると、そう思っても無理はありません。でも世界に目を向けてください。政治を率いる入間や集団を交代させるのがどんなに大変か。『中東の春』で独裁政権を交代させるために、人々は人命をはじめ膨大な対価を支払いました。指導部が交代期にある中国も不穏で剣呑な雰囲気です、血が一滴も流れず、社会の秩序も揺らぐことなく政権が一新されるというのは、実はすごいことなのです。
1990年代初めまで、海外の人々から「日本は本当に民主主義か」とよく聞かれました。政治学の世界でも、中国やシンガボールの一党支配と日本の政治をどう区別すれぱよいかは、難問でした。93年に政権交代が起こってからは、民主主義に起こりがちな問題は指摘されても、民主主義であること自体ば問われなくなった。長い目で見れぱ、日本の政治は確実に進化している、と。
-日本に二大政党制が根付くたのに何が必響なのでしょう。
「政治家が「考えること」です。考えないなら政治家をやめろ、と言いたい。自分の行動の直接の結果しか考えられない、というのもだめです。自分の行動が前例として踏襲され時にどんな慣行や規範をつくるか、あるいは台無しにするのか、まで考えなくてはいけない」
あきれたのは、消費税増税についての3党合意が成立した後、自民党がその合意を批判し、首相の問責決議案に同意したことです。
このまま選挙になだれ込んで欲しくありません。与野党もマスコミも、政権交代後の日々を振り返って「これができた、できなかった」今後はこういうことは無しにしよう」という整理をし、”私たちに語りかけて欲しい。選挙をするには準備不足です」
「日本の政治家やメディアの選挙好きには驚かされます。政治はポストを巡る争いであり、選挙はそのクライマックス、という誤解があるのでしょうか。政治は政策の方向性や細部を巡ってさまざまな人々が影響力を行使しようとする過程で、日々起こっています。そうした政治にもっと真剣になってほしい」
「こうした雰囲気の中で、問題を指摘し、行動を起こすのは大変です。でも、何もしなければそれが前例となり、他の人々の沈黙も促してしまう。それは、うそと秘密で塗り固められた全体主義への道かもしれない。逆に、自分の行動が他の人や未来に影響を及ぼすのを意識すれば、案外、勇気が湧くのかもしれません。米国や英国でも人々はそういう意識でやってきている、と思うのです」