命奪った豊かな海 天国と地獄が共存 宿命背負い生きる |
「震災前、フランスから来たカギ業者が気仙沼湾を見て『天国のような海だ』と称賛していましたが、私だちからすれば、ここは『天国と地獄が共存している海』なんです。ここに住もうとする限り、津波という『地獄』を受け入れなければならない。海底のコンクリートブロックにロープを結んで、海面にいかだを固定してカキやホタテを育てる養殖業は、津波が起きてしまえば、ひとたまりもありません。三陸で暮らす養殖業者は、必ず壊滅する宿命を背負っているのです」
「国も行政も『岸壁を直す』とか「防潮堤を高くする』という話ばかりしていますが、もっと海の背後にある森に目を向けるべきだというのが私の意見です。震災後、製材機を買ったんです。製材機があれば、地元の木を活用して家を造ることができる。山を切り開いて高台を造成するのではなく、地元の木を使い、自然の景観を損ねないよう地形に合わせて家を数戸ずつ建てる。その方がずっと良いように思えるのです」
-海だけではなく、その背後にある山を見ようと。
「そうです。今回の津波では宮城県だけで8万軒が全壊、14万軒が半壊しています。これらの家の再建にどこの木を使うか。ハウスメーカーは安い外材で建てようとするでしょう。でも、川の流域には戦後に植えた杉がたくさん残っているのです。間伐が進めば、森に光が入って養分が蓄えられ、やがてそれが川に流れ込んで海を豊かにする。私たちはしばらく、住宅や木材の関連でアルバイトをしながら、海がよみがえってくるのを待ち続ける。それが私が考える復興へのシナリオです」
「どれだけ高い防潮堤を築いても、絶対に巨大津波は防ぎきれないことを多くの人が知っているからでしょう。チリ地震の時の津波であれば何とかなるかもしれないが、それ以上の波が来たときはもう逃げるしかない。一方で、防潮堤を高くすればするほど、漁業をするのには不便になるし、景観も禍なわれてしまう。巨大な水門や堤防で山や湿地と切り離されてしまえば、豊かな海が失われてしまいかねない」
「津波にどう立ち向かうか、ということよりも、海や山とどうやってうまくつきあっていくのかを考える。そのことの方が、私たちにとってはすっと重要な問題なのです」 聞き手・三浦英考
さすが、考える男ですね。従来の考え方の延長で行ったら、”ハウスメーカーは安い外材で建てようとするでしょう”、でも、長いスパンで考えることが出来るのであれば、畠山さんの復興プランは当たっているのでしょうね。