田辺さんの過去のネット記事から |
人生一番の時代
ぼくにとっては、60歳から70歳の間の10年間は、人生で一番楽しい体験ができました。大学に10年間いた時期ですが、それは「ISIS」との8年と重なっていますし、もちろん美人でグラマーのカミさんとも一緒にたくさんのときを過ごせました(笑)。
まあ会社で言う定年を迎えてからの10年間にあたりますね。
この10年間は面白かったなあ。人生で一番面白かった、もちろんいままででは、ということです。これからもわかりませんが(笑)。
アントニオとビンゴ
=その論文で、老後の送り方のひとつに“無為”を挙げていますが、そうすると、田辺さんは無為というわけにもいきませんね。
地中海で見たひとりの男と一匹の犬の話をしましょう。
ある島のヨットハーバーに浮かぶモーターボートに、60代半ばの一人の男と、一匹のアフガン・ハウンドが住んでいました。男の名はアントニオ、犬の名はビンゴ。マドリッドに家があり、ヨットハーバー近くのアパートに細君と義母を住まわせています。一流企業をリタイアしたものの、さほどの金持ちというわけではありません。
白髪で穏やかそうな彼はいつもビンゴを連れてハーバー内をゆっくり散歩していました。それ以外何もしていません。彼と付きあいましたから、それがわかります。愛犬との散歩以外とくに何をするわけでもない日々を送っています。でも、彼は後ろめたさを微塵も感じないようでした。そしてアントニオのような老人は、スペインでは珍しくない。
日本人は有能で勤勉ですから、こうした生活ができないでしょう。死ぬ前まで勤勉に動き回るでしょうね。でも、スペイン人はどたばたしません。スペイン人には、富を貯めるという行為は“もうすんでしまった”との想いがあるのではないでしょうか。
スペインは、かつて全世界の富をかき集めました。だから、富を蓄えることはもうすんでしまったというわけです。
しかし日本人はまだ盛りというのを経験していません。だから、貧乏性になるのかもしれません。わさわさしちゃう。そういう意味では3,000年前後の歴史があっても、日本はまだ若い。そこへいくと、アントニオは悠然としていましたね。
短い間だったけど、盛を過ぎた日本にも、アントニオが誕生するのではあるまいか!