IT使い政治開く 東 浩紀さん 日経新聞 |
問題は政治や行政と市民の関係がまったくつながらなくなってしまったことだ、政治を監視する市民団体は日本の社会では特殊だ。そういう人たちの政治参加をいくら促しても限界がある。
とにかく、ハードルを低くする。市民が政治だと意識しないまま、いつのまにか興味を持つような仕組みが必要だ。
政府内の様々な会議を生中継してしまうのはどうか。動画配信サイトの「ニコニコ動画」の生放送番組のように、画面に視聴者からのコメントが流れるようにして、それを出席者たちが見ながら、会議を進める。
画面には刻々と視聴者のコメントが流れるし、事後的にネット上で炎上するかもしれない。基本的には無視していい。コメントする人々には何らの決定権もないのだから。ただ意識はせざるをえない。あるのとないのとでは、結論も微妙に変わってくるだろう。
ITの仕組みを活用し、普通の市民がなにげなく発信する声を集め、精度が高い形で民意をみえるようにする。最終的には大衆の無意識を可視化することにつながる。
政治家が民意にただ従えば全体主義に陥るし、民意をわかっていなければ、エリート主義になる。
大衆の無意識は混沌としていて危険なものも含む。
政治家に求められるのは、それらをどう現実の世界と擦り合わせるのかという、精神科医のような役割だ。ときに対峙し、治癒していく。もともとの政治の本分にも近いのではないか。