幸せになるとは限らない IPS細胞の進化 松村由利子さん |
また、出産年齢が高くなるほど、赤ちゃんに先天性の異常が現れやすくなります。「もともとある卵子で産みたい」という選択をして、病気を持つ子が生まれた場合、その人が周囲から「なぜ、真新しいIPS細胞を使わなかったの?」と責められることも考えられます。未来におけるプレッシャーとなる懸念を抱きます。
生殖補助医療は美容整形に似ているところがあります。どちらも技術がますます進み、どこまで選ぶか、いつまで続けるかは個人の価値観に任されている。選択肢が増えるようで、人々をよけいに迷わせます。
子どもがほしいという気持ちはだれにも止められません。科学が進めば、何歳になっても妊娠、出産をあきらめきれない人が増えそうです。ただ、「美容整形で若返って幸せかな」というのと同様、「生殖可能な年齢が伸びるのは幸福なことかな」と疑問に感じます。人生には「選べない」ことも多い。その事実を受容するのも大事なのではないでしょうか。
科学が進歩したからと言って幸せになるわけではない。科学は、原子力を産み、生産力の増強をうみ、寿命を飛躍的に伸ばしてきた。しかし、人間が死ななくなる訳ではなく、苦しみを救うわけでもない。でも、科学の進歩は止められない・・・さてさて、どうしますかね。