早速買ってしまった! 瞬間を生きる哲学 |
今、この一瞬を大切にせよ、それ自体は分かるのだが、より良い人生を歩むためには、将来の準備も必要である。それとこれとの、関係がまだ分からない・・・
ゴルフを上手くなるために練習は?今やっている、練習自体を味わうことになるのか?
横尾忠則さんの書評より
"BE HERE NOW"(今ここに)という言葉はニューエイジ・ムープメントのリーダーの一人ラム・ダスが書いた本の題名であることはすぐわかった。この言葉に出会った瞬間、人生の叡智を探る根本原理を「これだ」と本能的に直感して以来〈今ここに〉を生きるための処世態度としてきた。
ところが画家に転向して10年以上たった時、「今ここに」は創造行為それ自体であることに気づいた。外に求めていた答えが内にあったのである。そして今、目の前に本書がある。<今ここに><佇む>技法書である。
キャンバスに向かった瞬間から無限の価値と永遠の時間の中で、行為自体が目的化し、自由と解放と快楽と遊びが魂に呼びかけ、
「今ここに」を実感させる。そして「今ここに」の概念からさえも自由になる。絵画は、空間を創造すると同時に無限の時間の創造でもある。そしてこの瞬間の連続の体感の中に、この現実から分離したもうひとつの現実世界に到達して永遠を享受する。
本書は「いまこの瞬間のなかにすべて<人生の意味、美も生命も愛も永遠も、なんなら神さえも>」存在することを明らかにしようとする。この瞬間は過去にも未来にも存在しない。たった「今ここに」しか存在しない。これが生きることの重要性であることを著者は全編を通して熱く語る。本書では芸術創造は「つまるところこの瞬間刹那の豊麗さに撃たれること」であり、そして「瞬間を生きることは《時間を超えて生きる》こと」であると同時に時間体験であると指摘する。近代の時間は垂直に流れるが創造的時間は過去、未来ともに現在に同化することで瞬間の連鎖現象が起き、「陶酔と至高」に至る。
巻末のエピローグではインドの貧民街の13歳の少女の到達した「瞬間」の境地を著者は美しく易しい文章で締めくくっている。