ガラパゴス化に? 朝日新聞 キース・ビンセントさん |
このようなことを踏まえるなら、日本の中で起きた様々な進化は、ある程度の規模の文化的・地域的な背景があって生まれたことであり、狭い島国の中での特殊な現象と規定することはできないのではないでしょうか。
であれば、そこに、小さな諸島である「ガラパゴス」という言葉をあてることは無理があると思います。
私が英訳した『戦闘美少女の精神分析』の著者、斎藤環さんの指摘なのですが、例えば日本のオタクはマンガの裸を見て、時に興奮するけれど、こうしたことはアメリカでは考えにくい。
アメリカでは、フィクションとドキュメンタリーには厳然とした区別があって、架空の物語を事実を装って出版すれば、それだけで社会的な非難を浴びます。これはキリスト数的な問題意識から来ているものなのかもしれません。
一方、日本では江戸時代から多くの戯作が書かれており、近代以降でもヽ例えば谷崎潤一郎などは歴史とも空想ともとれるような作品を残しています。こうした文化的基盤があったからこそ、ライトノベルが読まれ、オタク文化が栄えることになったのでしょう。
とはいえ、日本の人たちば自らを、卑下するような意味合いも含め、何かにつけて「特別」と考えたがる傾向があるようですね。
「ガラパゴス化」もこうした文脈の中で生まれた言葉と考えていいのかもしれません。(聞き手・宮代栄一)