鷹 寺山修司 日経 小池 光 |
半世紀も前、青森の一高校生が作つた俳旬。五月の声を聞くと思い出す。高校時代俳句に熱中して表現者としての第一歩を歩み出す。
寺山修司の俳旬や短歌にはよく鳥類が出てくるが、鷹も有力なそのひとつ。
煩つけて瑠璃戸にさむき空ばかり一羽の鷹をもし見失なわば 寺山修司
その短歌版というおもむき。天空の鷹を見失ってしまったなら、なんにもないただ灰色の寒空が広がるばかり。文字通り希望と夢のシャープなつばさなのだ。
剥製の鷹ひっそりと冷えている夜なりひとり海見にゆかん 同
剥製になっても鷹は鷹。むしろ眼光のするどさはいや増す。