静岡大学教授 吉村 仁氏 最適者は危機で生き残れず |
市を築き文明を育ててきました。協調が社会の基本にあります。文明の初期段階では、生き延びるため、皆が協調します。しかし、生存が既定のものと思うようになると、自分さえよければいいという自己利益の最大化に走ります。結果は滅亡です」
― ― 今は危機の時代ですか。
「資源と環境の両面で有限性がはっきりしました。過去にも森林破壊で文明が衰退するなど地域的な危機はありましたが、産業革命を経て、今私たちが直面しているのは地球規模での有限性です」「地球温暖化対策をめぐる国際交渉は一例です。米国や中国など大国が自己利益の追求に走り交渉がまとまりません。成長機会の奪い合いではなく、協調の方が持続的な成長ができるはずです。気候変
動がもたらす大災害は国家の存亡につながる危機であると認識する必要があります。国際的な温暖化対策の枠組みは、抜け駆けを許すような仕組みではいけません」
よじむら・じん 54年生まれ。千葉大学理学部卒業後、米ニューヨーク州立大学で博士号取得。米デューク大学などを経て97年に静岡大学助教授、06年から現職。進化理論研究で知られ、 一般向け著書に「素数ゼミの謎」などがある。