山尾三省さん 日曜版より |
「一日暮らし」という詩がある
一生を暮らすのではない/ただ一日一日/一日一日と暮らしてゆくのだ」と終わるこの詩に、がんで余命幾ばくもない晩年のエッセー(『銀河系の断片』所収)で、自らコメントした。
「ぼく達の多くは、漠然と死を先送りするだけで、死ぬまでには何とかなるよ、それまでには成し遂げられるだろうと、何と数多くの日々をうかうかと過し去ってしまう生物であることだろうか」。
人間そして文明のあり方を見事に言い当てているとはいえまいか。「一日一日」をどう暮らすか、詩人の問いが響いている。(文化 堤篤史)