思いもよらない形で咲く花もある 安藤忠雄さん |
今度は新築ではない。大運河に面する旧いパラッツォ(貴族邸)の改造による美術館。ベニスならではの歴史的建造物保全の厳しい法律に苦戦しつつ、短期間で何とかつくりあげると、続いて、サン・マルコ広場の対岸にある15世紀に建造された「海の税関(プンタ・デラ・ドガーナ)」の改造計画の依頼を受けた。大運河にアートネットワークをつくるという構想だ。
2007年から工事を始めたものの、昨年からの世界同時不況。もしやと不安もよぎったが、計画に賭けるピノーさんの強い思いは揺るがない。6月初め、刺激的な現代アート作品を展示して、美術館は予定通りオープン。
先に完成していたパラッツォと水上バスで結ばれ、水の都に新たな息吹を吹き込んだ。
うまくいかないことの多い仕事だが、ときには思いもよらない形で夢がかなうこともある-だから人生は面白いのである。