ジェフリー・アイリッシュさん 48歳 朝日新聞 パート? |
-土喰の人は驚いたでしょう?
初めは珍しがられたけど、簡易水道の清掃があって、貯水タンクに入ってごしごしやった。共同作業は一体感を高め、仲良くなるいい機会です。お年寄りは外見や国籍にこだわらず、人としての思いやりを大切にします。無駄なものは捨て、大事なことを選ぶ知恵を備えているんです、言われるまでもなく自らの役割を果たす「結いの心」を備えています。大事なことは集落に明るい空気を作り続けること。悪口を言うより相手を思いやる気遣い。それが自然にできる「縄文杉」のような風格をもったお年寄りがたくさんいます。-「お金持ちではないが時間持ちです」と聞きました。
私の弟は病弱で5歳で世を去った。1歳年上の兄は中学のとき、旅先で急死しました。生きていることは当たり前、とは思えません。与えられた時間は貴重です。お金なら企業で役員をしていた頃の方がたくさんありましたが、今は大切な時間を全部、自分の意思で使えます。その私も40歳でがんが見つかり、発見が遅れたら危なかった。手術で入院していたとき、土喰の人たちが次々に見舞いに来た。住民28人のうち26人が。残る2人は入院中でした。白分はこんなに愛されている、と思うとうれしかった。
-土喰は限界集落で、やがてなくなる、と言われています。
限界集落というのは、共同体の営みを白分たちでできなくなった状態を言います。土喰は皆が支え、はつらつと機能しています。限界集落ではない。平均年齢が80歳を超え、厳しいことは確かですが、みな生涯現役です。多少の不自由があっても畑に出る。農作業ができなくなっても花を育てたり、お墓の掃除をしたり、おしゃべりし、笑う。年齢にふさわしい自然のリズムに沿って、豊かな時間が流れています。ゆっくりですが、みな忙しそうに、張りのある暮らしをしています。
土喰がなくなっても、共同体の文化は暮らしの中に地下水脈のように流れつづはると思います。地球環境が危なくなっている今こそ、身の丈に合わせて生きる、共同体の知恵を再認識すべきではないでしょうか。
素晴らしい考え方ですね、外国の方だから、見えるものがあるのかもしれません。