スモールかどうか 半農半Xの著者 |
塩見さんの天職は'「半農半Ⅹ」のコンセプトを広く伝えていくことだ。いずれ皆がク小さな農をやりつつ、好きな仕事で社会に責献する世の中が来ると考え、講演やワークショップなどを通してこのコンセプトを発信している。
二兎を追うもの一兎をも得ずというが、こう説明する。
「農業に専念するのではなく、ベランダ菜園のような土に触れる程度の〝小さな農″で構わない。その体験が天職の方にひらめきを与え、好循環を生む」。塩見さん自身'田んぼや畑での思索は大事な時間だ。
塩見さんは「家族4人が食べる分だけ」の農を営む。
稲1株から取れるコメはご飯茶碗に軽く1杯分。1日3食ご飯を食べた場合、1人が食べる稲の量は年間1000株に当たる。その苗を植えるのに必要な田んぼの面積は8・5mX20m。「これぐらいなら無農薬で手作業でできる。これからの時代はスモールサイズが重要だ」。
大学卒業後'1989年に通販会社「フェリシモ」に入社した。通販のカタログは紙を大量に使用するため、当時の会社は環境問題に早くから取り組んでいた。
また、同期入社の仲間は個性的な人が多く、自分だけが取り柄のない人間に思えた。自分のすべき仕事は何なのか・・・・。「環境問題」と「天職問題」について考えるようになった。環境に関する本を読むと農業や食の問題に突き当たる。まず食生活を玄米菜食に変えた。そしてモノをどん買って消費するような〝大きな暮らし”は捨てた。
33歳で人生をリセット
28歳の時、キリスト教思想家の故内村鑑三が1894年に講演した『後世への最大遺物』と題する講演録を読んだ。「我々は何をこのた世に遺して逝こうか。金か。事業。思想か」。
「この言葉を内村さんが話したのが、33歳の時。28歳の僕にとっては驚きだった。5年後の33歳までには、人生をリセットしようと決めた」
29歳の時、'屋久島在住の作家星川淳氏の著書の中で「半農半著」という言葉に出合う。エコな暮らしをベースに'執筆によって社会にメッセージを伝える生き方を提唱したものだ。
では、Ⅹはどうやって見つけるのか。模索し続けた塩見さんは次の方法を提案する。「自分が好きなこと。大事だと思うことなど。3つのキーワードを挙げて掛け合わせる」