<ノーベル化学賞>下村氏、研究一筋半世紀 自宅にも実験室 |
元ウッズホール海洋生物学研究所上席研究員、下村脩さん(80)の化学賞受賞が決まった。
「研究は、やり始めたらやり遂げることが大事。難しいからといって、最初からあきらめてはいけない」。下村さんは6日、毎日新聞の取材に、自身の研究姿勢をこう語っていた。生物発光の研究に取り組み始めてから約50年。まさに研究一筋の厳しい姿勢を貫いてきた人生だった。
捕ったオワンクラゲは実に約5万匹。その中から「イクオリン」という発光物質を取り出すことに成功した。だが、イクオリンは青く光る物質で、オワンクラゲは緑色に光る。研究を続け、イクオリンの精製時に、わずかだが緑色に光る物質を見つけた。これがGFPの発見につながった。研究は「やって少しでも分かってくると、それがまた魅力となり、面白さとなって研究をしたくなるんです」と語った。
たまたま近所にできた長崎医科大薬学専門部(現長崎大)に入学。卒業後、民間会社には就職しなかった。「人の言うことは聞かないですから、民間の会社では勤まらないと思った」と当時を振り返る。
趣味は、水彩画やデッサンなどの絵画を購入すること。「人間は自分の意見が正しいか反省しなければならない。研究とまったく違う分野の絵画は、そのための基準を与えてくれる」とその魅力を語る。ただ「研究と同じで、購入する時も徹底して調べます」。最近まで自宅の実験室で研究を続けていたが、いまは自らの研究を書き残す著作活動に忙しい日々を過ごしている。
◇変わらぬ好奇心
下村さんが卒業した長崎大薬学部の同窓会役員を務めた富安一夫さん(71)=東京都多摩市=は昨年1月、東京都内のホテルで開かれた朝日賞の贈呈式で下村さんと会った。富安さんは「下村先生は講演で『大学の一線を退いた今でも、自宅に研究室を作って研究を続けている』と話されていた。とにかく元気で、好奇心が旺盛。『GFPの抽出には成功したが、自分では用途が分からず、他の研究者のお陰で有名になった』と述べるなど、成果をひけらかすこともなく、ひょうひょうとした方。