梯 久美子・評『哲学な日々 考えさせない時代に抗して』野矢茂樹・著 2015年12月15日 |
by nandemokoukisin 検索
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2017年 12月 25日
野矢氏の今年の推薦本が、「中動態の世界」ほかでした。彼自身も、鷲田清一氏に、「中道相」だと言われたことがあるそうで、この本に、自然と導かれたと書いてました。その、野矢氏の本が読みたくなって、図書館で予約したのが、この本です。
体験し、血肉にしてこその哲学
◆『哲学な日々 考えさせない時代に抗して』野矢茂樹・著(講談社/税抜き1350円) 世に文章読本というものがある。一時期、集中的に読んだことがあるが、思い返しても内容はあまり頭に残っていない。 どの本だったか、「なのだ」「なのである」を多用するべからず、というのがあって、それだけはいまも気をつけるようにしている(たしかにこれらを多用した文章を読むと、耳元で大声で演説されているような気分になる)。だがそれ以外で有益なアドバイスというのは、いまとなっては思い出せない。 野矢茂樹さんの『哲学な日々』はエッセー集だが、「べからず」「すべし」式の文章読本より、よほど役に立つ。野矢さんは哲学者で東大の先生。実践的な論理学の入門書としてベストセラーになった『論理トレーニング』の著者として知られる人である。 哲学者の本というと、硬くてむずかしいのではないかと思う向きもあるかもしれないが、さにあらず。活字を追う行為がこれほど快感だったことは近年まれである。学者として、教師としての日常的な話題が中心で、とくにドラマチックな内容ではないが、とにかく文章が気持ちいい。リズムがあって軽やかで、ときどきクスリと笑わせる。そして深い。 実をいうと、この本との出会いは、少しばかり変則的だった。数カ月前、西日本新聞社から、全50回のコラム欄を担当しないかという話をもらった。依頼のメールには、これまでに同コラムを担当した方の記事のコピーがいくつか添付されていた。その中に、野矢さんの連載第一回目の文章があったのだ。一読して私は思った。「続きが読みたい!」 連載はありがたく引き受けることにし、新聞社の方と会って打ち合わせすることになった。その人は、これまで自分が担当した筆者のコラムをすべて切り抜き、掲載順に大学ノートに糊(のり)で貼り付けたものを持ってきていた。いまどき珍しいファイルの仕方に好感を抱きつつ、野矢さんのコラムを読みふけること数分。「これ、本にならないですかねえ」と言うと「あ、もうなってます」。連載中からすでに、ぜひ単行本にしたいという話があったという。「で、刊行されてすぐに増刷になりました」。さすがというかうらやましいというか。その帰りに本屋に行き、さっそく入手したのが『哲学な日々』である。 連載第一回目の内容は、東大での初めての授業を終えた野矢さんが、理系の学生に「この授業で何を学べばいいんですか」と聞かれた話だった。何と答えるべきか考えた野矢さんは、授業の目的は哲学の知識を得ることではなく、哲学を体験することだという結論に達する。「哲学は体育に似ている」「実技なのだ」 文章を書くというのも、論理に基づいた実技トレーニングだということが、本書を通して読むとよくわかる。野矢さんは、名文を鑑賞させ、「さあ書きなさい」と作文を書かせても、日本語の力は身につかないと言う。ではどうすればいいのか。そのヒントが本書には示されている。なるほどと何度も膝を打った。 すらすらと気持ちよく読める文章には、強靱(きようじん)な論理の糸がスーッと一本通っている。そのお手本のような一冊である。−−−−− かけはし・くみこ ノンフィクション作家。『散るぞ悲しき』で大宅賞。近著に『猫を抱いた父』(求龍堂)、『廃線紀行』(中公新書)<サンデー毎日 2015年12月27日号より>
by nandemokoukisin
| 2017-12-25 21:59
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