65歳からは検診・薬をやめるに限る 名郷 直樹著 |
医学村にいいように、あしらわれている私たちは、そろろそ、医療のことも自分で考えて行動して、医療費も減らし、より人間的な生活をめざすべきだと思いました。
「誰もが無理をしてがんばらなくてもいい社会、少なくとも、風邪を引いたら「家で寝ていたほうがいいよ。お給与はちゃんと出すから」とまわりも当たり前に認め、本人も安心して「休む」ことができる、そういう寛容な社会をこれから日本はめざしていかなくてはいけないと思います」。
目指すのは、病気の時は、薬を飲んで無理に会社に行くより、家でゆっくり休める社会ですね!
・幸せな老後を送ることを考えるなら、「健康欲」「長生き欲」は捨てて、別の生き方ー先を考えて生きるのではなく、今を大切にしていくことです。
・実は検診を受けても受けなくても、65歳からのその後に大差は無いからです。検診を受けるお金と時間があるなら、趣味を充実させるとか、おいしいものを食べるとか、自分の満足感につながることにかけて今を大切にする方が、はるかに有意義です。
・残念ながら、長生きしても最晩年には不健康寿命が来るのです。医療で健康寿命は伸ばせません。
・いつまでも元気で長生きはありえないのに、「健康・長寿」にこだわりすぎることが、多くの人の不幸を招いている。
・健康を気にすぎることをやめれば、日本人はもっともっと幸せになれる。
・ 65歳から70歳までの5年間は、高齢者にとって最も健康でいられる可能性の高い期間です。70歳を過ぎれば遅かれ早かれ人は死んでいくのです。
・「がんは早期発見が大事」とよく言われますが、実際には早く見つけるとかえって厄介なことになるがんもあります。薬も、本当はたいして効果がないにもかかわらず飲み続けられているものがたくさんあります。
・65歳を過ぎた人に定期検診は必要ありません。むしろ受けると不幸になる。「健診は受けるべき」という固定観念を外してフラットに眺めてみると、じつは検診を受けても受けなくても、65歳からのその後に大差は無いからです
・死亡率が最も低いのはBMI25くらいで、反対に、死亡率が最も高いのは、やせ型に分類されるBMI19未満なのです。
・要するに、住民健診の効果があるかどうかはよくわからないと言うことです。脳卒中、心筋梗塞、心不全による死亡、さらにはがんによる死亡についても同様な結果です。このように健診の有効性については未だに明確になっていません。「おそらく有効だろう」と言う予測にもとづいて行われているのです。そして健診を受けるグループでむしろ死亡率が高い傾向にあったと言う驚くべき結果が出たのです。
・健診は仮に病気の予防効果があるとしても、医療費がかかるタイミングを先送りしているだけです。対策型の健診を毎年受けることで医療費が削減でき、家族や社会の負担を減らすことにつながっているかは、大いに疑問だと言わざるを得ません。
・実は、がんにはあまり早く見つけてしまうと、むしろ不幸な結果を招いてしまうものがあります。「甲状腺癌」と「前立腺癌」です。ケースによっては「乳がん」も含まれます。これら3つのがんには共通点があります。それは、平均的には進行が非常に遅いこと。
・甲状腺がんや前立腺がんの検診は、受けないほうがいい。少なくとも、高齢者は絶対に受けない方が良い。これは様々なデータから明確であり、断言します。
・もしも65歳で「早期がんが見つかりました」と告げられた時に、「生死にかかわらない可能性が高いから、治療はしない」ときっぱりと決断できる人は、果たして、どれほどいるでしょうか。むしろ、「それは大変だ。すぐに治療しなくては」と思うのが、多くの人の心情ではないでしょうか。しかし、がん治療には大きな副作用の問題がありますし、治療費もかさみます。本当なら必要ないかもしれない治療に大金をかけ、副作用に苦しみ、「いつかは進行癌になってしまうかもしれない」とがんに怯えながら過ごす。このような人生を送るのなら、いっそ検査などしないで、がんであることを知らずにいたほうがよほど幸せではないでしょうか。
・確かに、さっきの論文によると欧米で1,980年代にマンモグラフィーの検診が導入されてから、早期乳がんの発見は2.5倍から3倍に増えています。ところが乳がんによる死亡率自体は全く減っていません。このことが意味するのは、結果を変えないようなごく早期のがんが見つかるようになっただけで、死につながるような進行がんを救うことにはあまり役に立っていないということです。
・がんは早く見つけすぎないほうがいい理由には、さらに、もう一つあります。ごく早期の小さながんの一部は、私たちの体に備わっている自然治癒の働きによって消滅してしまうことです。
・乳がん検診にどのくらい効果があるかを調べたランダム化比較試験のメタ分析を見てみると、検診で乳がんが見つかった人は、検診以外で乳がんの見つかった人より、乳がん以外のがんによる死亡が2.42倍も多いと言うデータがあります。乳がん検診で見つかった場合、早めに抗がん剤や放射線治療が行われたことによる副作用で、別のがんが増える危険があるのです。
・定期検診の結果で注目すべきは、数値そのものより変化です。
・糖尿病の患者さんには、大好きな甘いものやお酒をひたすら我慢し、運動を一生懸命して、少しでも血糖値を下げて正常値に近づけようと頑張っている人がたくさんいます。しかし、あんまり頑張りすぎても意味がないことを多くの研究が示しています。
・65歳定年世代の人については、血圧や血糖の薬と同様、コレステロールの薬も必要ないと思います。そもそも、「高コレストロール血症」には、自覚症状がありません。検査をして初めて気づくわけです。つまり、検査をしなければ気に留めなかったのに、数値が高いとわかった途端に心配になるのは、「コレステロール自体が悪い」と刷り込まれているからです。
・それまで血圧、血糖値に問題がなく、極度の肥満もなく、タバコも吸わないような人が、65歳を過ぎたら、もうコレステロールは関係ありません。二度とはからなくていいと思います。コレステロールの事は忘れて、のんびりしてください。
・薬に求められる効果は、病気そのものを直し寿命伸ばすことですが、実際の効果の大半は「血圧が高い」「血糖値が高い」と言う症状を抑えることにとどまると言うことです。
・風邪をひいて病院にかかると、大抵薬をたくさん処方されることになります。それは「風邪」そのものを治す薬はないからです。そして、いろいろな薬で風邪の諸症状を抑えても、風邪そのものを早く治す事はないと、はっきりわかっています。
・例えば頭痛・発熱に対してよく処方される解熱鎮痛剤のロキソニン。これを飲むグループと飲まないグループで、どちらが早く風邪が治るかを調べた研究があります。むしろ飲まない方が数時間早く治ると言うものでした。ロキソニンには熱を下げる効果はあっても、風邪を治す効果は見られないことが証明されたわけです。
・薬と言うのは、できるだけ飲まない方が良いに決まっています。クスリには必ず副作用があるからです。病気を治すために飲んでいる薬で別の病気になってしまったり、ときには命が脅かされることもあるのです。
・副作用の問題はすべての薬についてまわりますから、服用する種類が増えれば、それだけ副作用も増えることになります。
・間違っていないものの、大きく歪められた情報が広く流布し、「薬を飲めば病気が予防できる」と言うような定説が出来上がっていったのです。
・確かに、風邪の患者さん12,000人に抗生剤を投与すると、肺炎による入院が1人減るというデータがあります。しかし、そうやって大勢の人に抗生剤を投与したことが多数の耐性菌を作り、本当に肺炎になった時に、抗生剤が向かないと言う困った状況を生み出すことになったのです。これは、抗生物質で肺炎を予防しようと言う考えが、いかにバカげているかということをよく表しています。
・肺炎は肺炎になってからでも治療ができます。ですから、12,000人に抗生剤を投与して耐性菌をたくさん作るより、投与を止めて耐性菌を減らし、肺炎になってから治療する方が、はるかに合理的で社会全体の利益になります。
・医療に限らず多くのことが、真実とは関係なく、世の中の大きな流れに押される格好で「正しいこと」「正しくないこと」として決まっていき、やがて定着して「文化」となっていきます。
・テレビの医療番組や薬のCMを真に受けない。薬を飲む文化にすっかり取り込れてしまっているのです。
・サプリメントやトクホは食品扱いといっても、血圧を下げたり脂肪の吸収を抑えるという作用がある以上、薬と同じように副作用の危険を考慮する必要があります。サプリメントやトクホのメーカーは、人への実際の効果は全く不明である事は承知の上で、商品を販売しています。
・あらゆる医療行為の中で、かかるコストに対して最も効果が大きいのは、麻疹ワクチンだと言われています。麻疹の特効薬はなく、解熱や咳止めなどの対症療法を行いますが、基本的には自然に治るのを待つしかありません。ですから、予防が最も有効な治療法といえます。そして唯一の予防法が、ワクチン接種です。
・高血圧の治療等などに比べると、肺炎球菌ワクチンの有効性ははっきりしています。今65歳で接種のタイミングと言う人は「70歳までの5年間は楽しみたい」と考えるか、それとも「65歳を過ぎたらいつ死んでも良い。その原因が肺炎でも構わない」と考えるか。この先5年間の自分の幸せをかんがみて、接種するかどうかを決めるのも決めるといいと思います。すでに、それ以上の年齢になっていると言う人は、ワクチンの有無にかかわらずいろいろな病気のリスクが高まっています。ここであえて痛い思いをしたり、自治体によっては一部ご負担となるので、そのコストをかけてまで摂取する必要あるのか。よく考えてみてください。
・子宮頸がんワクチンについては頻度が低く不確定な副作用に対して、圧倒的な効果が示されているにもかかわらず、 接種の勧奨を中止するという事例は、薬では考えにくいことです。その背景には、もしかすると、ワクチンで病気を予防するとその先の治療が必要なくなってしまうことが関係あるのかもしれません。ワクチンよりクスリが好まれる日本の風潮は、メーカー主導で作られたと言えるかもしれません。
・「本当に医療を受ける必要があるのか。あるとしたら、その効果と害は何か」と冷静に考えることです。つまり「科学的な考え方」をすることです。疑って、疑って、とことんまで詰めようとするのが科学的な考え方です。つまり、因果関係を簡単に結びつけてはいけないということ。
・病気になるかならないか。それは、はっきり言って「運」です。
・離乳食から食事制限をせずに、なるべくいろんなものを食べさせたほうがその後のアレルギーを予防できるのです。これは、風邪で抗生物質を飲むことと似ています。どちらも、病気にならないように先手を打つことで、かえって不健康な状態を作り出しています。健康は気にしすぎても全く無関心でも、よくありません。
・「元気で長生き」するために医療化の波に吸い込まれていくことになってしまうのです(医療化とは、本来必要のない医療まで、受けた方がいいとする世の中の流れのこと)。
・放っておいても自然に治る病気も、積極的に「早く治さないといけない」と誰でも思い込んでいます。薬を飲んでも飲まなくても治るまでの時間は大して変わらないにもかかわらず、です。今必要なのは、風邪を治す薬ではなく、風邪やインフルエンザにかかった時に「家で寝ていたほうがいいですよ」と言ってくれるような、病気に対して寛容な社会です。
・誰もが無理をしてがんばらなくてもいい社会、少なくとも、風邪を引いたら「家で寝ていたほうがいいよ。お給与はちゃんと出すから」とまわりも当たり前に認め、本人も安心して「休む」ことができる、そういう寛容な社会をこれから日本はめざしていかなくてはいけないと思います。
・もし「よく死ぬ」と言うことがあり得るなら、こういう日々の生活の中にこそある死こそ、まさにそうではないか、と思うのです。今の日本は死を特別視するあまり、多くの人が不幸におちいっています。誰かが死ぬとなると、その人が中心となって全てが回り出すようになり、例えば介護問題のように、周りが疲弊してしまう。また、介護される側も、死を少しでも先延ばししようとできるだけの医療を受けようとすることで、より「よく死ぬ」ことから遠ざかってしまう。
・死を含めてその人の人生であり、「よく死ぬ」ことは「よく生きた」いう証です。その人の「生き方」が「死に方」につながります。健康寿命をより伸ばそうとするような無益な社会努力は一刻も早く止め、誰もが老いを当たり前のこととして受け入れ、若者と老人が、健康なものと不健康なものが支えあっていく、そういう寛容な社会を目指すべきです。