「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」 ランス・アームストロング著 |
新聞によれば、睾丸ガンから、肺がん、脳腫瘍にまで転移しながらも、ガンを克服し、見事に成し遂げた快挙だとか。身体頑強な自転車乗りでも優勝するのが至難なツールドフランスに、ガンを手術と科学療法で乗り越え生還を果たし、なおかつ、あの厳しい長期間にわたるツールドフランスに優勝したと!!
さらに彼は、科学療法を受けると生殖能力を失い回復しない可能性が強いため、科学療法の前にとっておいた精子から、子供を得ることにも成功するのです。
彼の生い立ちは、決して幸せなものではありませんでした。ほとんどを、母一人で育てられ、貧しさの中で育って生きますが、次第に走ることや自転車に水泳に能力を発揮し始めます。周囲の人の薦めもあり、自転車競技に向かうようになります。ただがむしゃらに走って顰蹙をかった彼ですが、病気後は自転車に対するヨーロッパ人の思い入れもわかってきます。ツールドフランスとは、7月に行われる、自転車の世界の3大競技の一つです、20ステージまであり、一番短い日で、個人のタイムトライアルが55キロで、あとは大体一日200キロ前後を走る過酷なレースです。そして、その日までの総合タイムで、一番早い人が、マイヨ・ジョーヌと呼ばれるジャージーを着ることができるのです。この本の原題は、「それは自転車のことだけではない」ですが、日本語の題名は自転車の象徴である、マイヨ・ジョーヌのためだけでなくと・・されています。この癌との闘いもありますと言っているわけです。
それにしても、アメリカ人というのは、日本人と違って、癌から復帰したあとがすごいです。競技生活に復帰するのもすごいのだけど、早速癌の基金を作ってしまうその行動力が素晴らしいと思います。
合わせて感じたのは、医療が進んでいるというか、オープンなことを痛切に感じました。最初の病院だけで満足することなく、自分で調べて、そして色々な人に助言と取り入れて、他の病院を尋ねていけるのは、日本では考えられことです。
日本では、最初に掛かった病院に、最後まで掛かるというのが、普通なのではないだろうか?
日本人の気質としても、あちらの病院の方が私に合う手当てをしてくれるので、移りますとは、よう言えないですね。ガンを克服した彼は、ついに、ここまで言い切れるようになるのです。「断言していい。癌は僕の人生に起こった最良のことだ。なぜ僕が癌になったのかはわからない。けれども癌は不思議な力を与えてくれた。僕は癌から逃げる気はない。人生でもっとも重要な、人生を形作ってくれたものを、忘れたいと思う人などいるだろうか。」ただ彼とて、最初からそう思ったわけではなく、こんな助言を受けた時にも、当然反発をしています。それは、癌に患っている軍人からのEメールで「君はまだ分からないだろうけど、僕たちは幸運な人間なんだ」に、こいつ馬鹿じゃないか?と反発します。その結果ですから重みが感じられる言葉です。