裸の華 桜木紫乃著 |
内容を全然知らずに読み始めましたが、予想に反して裏切られる展開でしたが、なかなか、面白い小説でした。
踊り子をテーマに、師匠、弟子で育ち、今度は自分が師匠格、弟子を育てる関係になり、そして、昔の師匠は老いさらばえるも、それでも師匠!そして、若さの躍動感、怖いものしらず、のびやか・・・
う〜ん、その後の展開を知りたくなります。
帯には、
「身体を磨き、心を伝える踊り子たちの鮮烈な生き様を描く、極上の長編小説」
昔、見たストリッパーたちにも、こんな気概を持った人たちがいたのだろうか、それとも、見えなかったのだろうか・・・・・見てるものが違っていたんだろうな(笑)
<抜書>
・誰も誘ってはいけない、誰に声をかけてもいけない。それが自分を育ててくれた舞台への、最後の切り義理だった。
・ノリカちゃんのステージは、まだ終わってない。フィナーレは、もっとずっと先だと思うよ。僕、いっぱい小屋に通っていろんな踊り子さんを見てきたけれど、最後のダンスを踊る子は分かるんだ。ノリカちゃんは、まだまださきだよ。
・難しいことをあっさりやってのける人間はいつも、その居場所を同じくらいあっさりと捨てられる。潔いとか往生際が悪いという問題ではなく、技術にすら執着しない突き抜けた自棄があるのだった。左脚の怪我でわかったことがあるとすれば、スリッパーのノリカを作っていたのは、日々の鍛錬だったということだ。天才なんかじゃない。
・技術に見合わない、心の硬さ。そして何より、師匠を信じる目の澄んだ輝きです。出来上がった女優には、この役は無理です。不安に見えるよう計算された自信のある演技では、表現しきれない気がしてるんです。だから、今日はあなたにお目にかかりたかったんです
・ぼくは、伝説には伝説にふさわしい結末があると思っています。事実とは違うから夢があるんです。それを映画が叶えてくれるのなら、僕がこの一本に賭けてもいい
・一人ぐらいは お前だけに 焦がれる人が いるものだよ
そうさーノリカは無意識に左の膝をさすっていた。そのたった一人のために、踊ってきたんじゃないか。踊り子ノリカの舞に焦がれるたったひとりの観客のために、小屋にいたのだと、今ならば分かる。
・踊り子が、人の再生を信じなくなっておしまいさーー・
・静佳は、満足なのだ。たとえ周りが彼女をどうみようと、それは周りが見たい彼女の像でしかない。腹の中なんぞ、誰にもわからない。だから女の体はひたすら丸みを追いかけ、きめの整った肌を持つ。くびれた腰の奥に様々な感情を詰め込んで、天国なのか地獄なのか分からぬ入り口の亀裂から、絶え間なく細い糸を吐くのだ。