小さな家の典型です!鴨長明 |
二種類とは折琴と継琵琶で、この楽器の名手だった鴨長明は携帯用に考案された楽器をふたつも方丈に持ち込んで、それを部屋の中のとっておきの場所に立てかけて置きました。
琴も琵琶も鳴長明にとって方丈での暮らしの大きな愉しみだったと同時に、方丈のしつらえ (インテリアデザインと呼んでもいいかも知れません)に欠くことのできない備品だったのだと思います。
永井荷風が「楽器は恋人の繪姿にも等しい。 繪姿は口をきかないが、焦がれる人の心を慰めるよしや弾かなくとも、弾き得ずとも、まだ弾く人がいないにしても、楽器のある家は何となくなつかしい。」と書いているように、楽器というものには部屋の品格を引き上げる特殊な力が具わっているようですから、ふたつの楽器を置くことで方丈はただの粗末な小屋ではなく高貴な趣味人の典雅で気品ある住まいとなったのです。