経済気象台 内向き時代の始まり (山人) 朝日新聞 |
1990年代以降、経済成長の原動力はグローバリゼーションだった。市場開放や自由化、経済統合に伴い、世界規模で貿易や投資、金融取引が急速に拡大して、経済成長を押し上げた。
しかし今、グローバリゼーションは逆流を始めている。世界貿易の伸びはGDP(国内総生産)の伸びを下回り、対外投資も鈍化している。失業や社会の不安定化ど、移民増大に対する懸念が強まり、英国民はEU(欧州連合)離脱を選択した。
そのような変化の背景には、グローバリゼーションがもたらした経済社会の不均衡がある。世界貿易の拡大は先進国製造業の空洞化や失業、賃金の下落を招いた。国際金融の拡大は過大な資金流入によるバブルや、急速な資金流出による混乱をもたらした。所得・資産の格差が拡大し、多くの労働者にとって雇用・賃金は不確実なものとなった。
問題は、政治家に代表されるエスタブリッシュメントが、それに見て見ぬふりをしてきたところにある。彼らは、グローバリゼーションの利益を喧伝する一方で、不利益を過小評価してきた。格差拡大に懸念を示しはするが、処方箋を考えようとはしなかった。移民の経済的利益を強調する方で、それがもたらす社会的緊張には目をつぶった。
それに対する異議申し立てが、最近目立つ政治的異端者の台頭であろう。その象徴がトランプ氏であり、サンダース氏だった。彼らは本音で反グローバリゼーションを語り、取り残された国民の復権を訴えた。だからこそ有権者の支持を集めたのだ。トランプ新大統領の登場によって世界の景色は激変する。大恐慌時にみられたような「内向き経済」の時代が始まる。
追記 2019/12/13この投稿を見てくれた方が、いました。読み替えてみると、この方、本当に適切に当時語っていますね。いま読んでいる、「目からウロコの経済教室」も、この論調です。