昔読んだ本から 霧の橋 乙川優三郎著 |
序の部分が突然幕切れになって、主人公が死んでしまった?と思わせるのだが、それから息子の話に移って話は進みます.
内容は、仇討ちの話でもあり、商売の話であったり、悪徳商人との抗争だったり、サスペンスあり活劇ありと内容は豊かです。
そして底辺にながれる主題は、夫婦の物語でもあり、最後まで一気に読ませてくれます。 人間が成長するには、「人生の苦労」必要なんだと思わせ、多分江戸時代にも食うか食われるかの商人のせめぎ合いもあったのだろうと思います。
話の筋は、父親が小料理屋で友人に討たれ、息子が10年の歳月を掛けて仇討ちをするのであるが、辛い思いをして国にかえっても良いことは待っておりません。やむなく国を出て、苦労に苦労を重ね、結局は江戸に行き、たまたま暴漢に襲われた娘をたすけて、その父親に気に入られ商人になります。
彼なりの才覚を発揮して、軌道にのってきた頃に、危機を迎える。
それは、商売の危機でもあるが、夫婦の危機をも招いてしまう。
危機は、一旦乗り越えたと思われるが、ある日突然、父が討たれた本当の原因となった人物が現われ、主人公の惣兵衛は、また刀を取り出し仇討ちへ向かうことになる。
主人が商人を捨てて侍に戻ってしまうのではないかと、心配する女房のおいと。
そして最後の泣かせるラストシーンへ、私も涙腺が緩んでしまいました。
山本周五郎を思わせる時代小説で、第七回の時代小説大賞の受賞作だそうです。
2003.10月頃の読書です。