ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか 熊谷徹著 |
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・仕事は重要ですが、自分の時間を犠牲にすることになりかねません。我われドイツ人にとって、休暇とは、人生の中で最も重要なものです。
・ドイツ人は、他者のために行う労働の時間と、自分のために使う時間を厳密に区別する。企業などが10時間を冒すことを断固拒否し、自由時間の確保を重要視する。
・私がドイツで「すごい」と思うのは、大半のサラリーマンが30日間の有給休暇を、完全にとるということだ。
・ドイツでは仕事が人につくのではなく、企業についているのだ。ドイツのお客さんは、自分の顔なじみの担当者がいなくて問い合わせに対応できなくても、変わってきちんと対応してくれる人がいれば何がなんでも自分の担当者を出せと要求しない。
・ドイツ経済は、リーマンショックによる2009年の深刻な不況から急速に立ち直った。2011年、フォルクスワーゲン社やBMW社は、創業以来最も多く収益を計上した。2013年にドイツの社長の中で最も年収が多かったのは、フォルクスワーゲン社のマルティン・ヴィンターコルン氏。1500万ユーロ(21億円)を稼いだ。
・なぜドイツ経済は、ユーロ危機にもかかわらず調子が良いのだろうか。その最大の理由は、1998年から2005年まで首相だったゲアハルト・シュレイダーが、「アゲンダ2010」という経済改革プログラムを断行したことだ。
①雇用市場と失業保険制度の改革、②低賃金部門の拡大、、③公的年金保険制度の改革(支給開始年齢を65歳から67歳に引き上げ)、④公的健康制度の改革、⑤賃金協定の柔軟化、⑥派遣労働に関する規制緩和、⑦所得税・法人税の減税及びキャピタルゲイン課税の廃止
・メルケルは、2005年に就任したときに、議会で行った演説の中で、シュレーダーに対し、勇気を持って改革を実行したことに感謝すると述べた。
・この背景には、ドイツの企業では、自分の仕事や責任の範囲が明確に決まっているという事情もある。
・日本では、「法律や規則よりもお客様へのサービスが先だ。お客様に満足してもらえなければ、注文が来なくなってしまうと考える経営者が多いのかもしれない。そのことが、労働基準法の空文化の背景にあるかもしれない。
・ドイツ人は、仕事をする時に費用対効果の関係を常に考えている。費やす時間や労力に比べて、得られる効果や利益が少ないと思われる場合には、仕事を始める前に、そのような仕事をする意味があるのかと真剣に議論する。
・新しい発想には、時間に追われる慌ただしい生活は適していない。ゆったりとした時間が必要。
・本当にリッチな人とは、お金だけをたくさん持っている人ではなく、自分の時間をたくさん持っている人だとドイツ人をみてつくづく思う。
・ドイツの企業は日本や米国と異なり、全ての従業員と雇用契約を結び、書面化することを法律によって義務付けられている。
・「Sozial=社会的な」とは、利潤の極大化だけでなだけではなく、社員の福祉構成にも配慮する会社だ。つまり株主や経営者だけではなく、勤労者の権利等の「公共の利益」をも重視するというん前向きな評価を込められている。
・ドイツではサービスよりも価格の安さ。ドイツ人の中には、暖かく調理された食事は昼しか食べないという人が少なくない。朝食はパンとコーヒー、夕食もパンだけという家庭が大半だ。
・発明はうまいがビジネス化がへたなドイツ
・ドイツ人の技術者のあいだでは「日本や米国、中国やインドでは、消費者が新しい技術を使った製品に強い関心を示す傾向がある。しかしドイツの消費者の間には、こうした新技術への強い関心、情熱がない」と嘆く声も聞かれる。
・日本の労働条件改善の第一歩 ー すべての社員に雇用契約書
・今日のドイツのワーク・ライフバランスは、リベラル勢力が約50年間にわたって行った努力の賜物なのである。その意味では、現在の日本では野党があまりにも弱く、保守政党との対抗勢力になっていない。
・私がこれまでお伝えしてきたドイツ人の仕事哲学のなかには、個人あるいは自分が働いてる人の中でできる事もあるのではないか。例えば、仕事の優先順位を素早く決定し、場合によっては無駄な仕事切り捨てる。たまには思い切って早めに退社して、本業とは違う活動行ったり、無為な時間を過ごしたりして、新しいアイディアを生む。バッテリーは放電しているだけでは、長く仕事を続けることができない。
・仕事だけでなくプライベートの時間も大事にするドイツ人たちを見ていると、「こうした生き方もあるんだ」と考えるようになった。しかも彼等は、日本人より長く休んでいるのに、国民一人当たりのGDPでは日本を凌駕し、経済成長も実現している。