微生物で堆肥化 臭くない 朝日新聞 キエーロ |
ごみ減量のため、全国に先駆け家庭ごみの細かな分別収集を姶めた熊本県水俣市。昨年末から「分別では減らせない」生ごみを、各家庭で堆肥化する試みを始めた。切り札は、土に生ごみを混ぜ込んで中のバクテリアに分解させる処理器「キエーロ」。神奈川県葉山町の松本信夫さん(66)が、風通しなどを工夫して考案したもので、日曜大工でだれでもできるものだ。
主婦の高松節子さん(72)=水俣市牧ノ内=は、モニター用として市から配られた土台を庭の隅に置く。幅1㍍、奥行き50㌢、高さ80㌢。流し台のような箱の中に、普通の黒土が約200㍑入っている。
記者が訪ねた際、高松さんが入れたのは、ニンジンやネギの切れ端と卵の殼。深さ15㌢の穴を握ってごみを入れ、かき混ぜて埋める。約5分の作業だ。
「簡単でしょ? 2週間でなくなっちゃうんですよ」。生ごみは、土の中に元々生活しているバクテリアで分解されるという。他の場所を握り返すと、魚や鳥の骨が出てくるが、生ごみの臭いは感じない。生ごみは重量で約8割が蒸発してしまう水分のため、中の土も増えず、手入れも不要という。
夫(72)と2入暮らしで、昨年12月以来、約100㌔の生ごみを処理した。分解されにくいミカンの皮などを除き、収集に出す生ごみは半分になったという。収集時間に関係なく処分でき、月約200円たった生ごみ袋の購入費も半分に。「とても満足」と笑顔だ。
生ごみの堆肥化には、プラスチック製の「コンポスト」、電動の生ごみ処理機などがある。
松本さんによると、自身で両方試したが、電動式は故障に悩み、コンポストは臭いがきつかった。いずれの方法も最後には土にかえすところから「最初から土に入れたらいいのでは」と、庭の土の上に木枠をのせたキエーロの原型ができたという。
環境省によると、家庭からのうち約4割は生ごみ。多くの市町村が生ごみを本来向かない焼却で処理している。廃棄物対策謀の布施克詰課長補佐は「生ごみは集めて処理するメリットが少ない。生ごみを出さなくする家庭での処理は、とても効果的だ」と話す。 (奥村輝)