我々は加害者の末裔である 森達也 朝日新聞 |
誤解を解きたいと安倍晋三首相は言った。再び戦争の惨禍に人々が苦しむことのない時代を創る決意を祈念したのだとも。
ならば同時に宣言するべきだ。戦争とは一部の指導者の意志だけでは始まらない。彼らを支持する国民との相互作用が必要だ。戦争責任をA級戦犯だけに押しつけるべきではない。私たちは被害者であると同時にでもあるのだと。
歴史上ほとんどの戦争は、自衛への熱狂から始まっている。指導者やメディアは平和を願うなどと言いながら、結局は危機を煽って、国民の期待や欲求に応えようと暴走する。特に安倍政権誕生以降、自衛の概念が肥大している。大義になりかけている。ならばこの国はまた同じ過ちを犯す。積極的な平和主義を唱えながら。
(もり・だつや 56年生まれ。映画監督・作家。明治大特任教授。近著に「クラウド増殖する悪意」)