小さな共同体に復興の芽 平田オリザさん 朝日新聞 |
地縁血縁型の社会だけでは排他的になりすぎる。利潤追求を目的とした利益共同体のみでは冷たすぎる。その中間に、文化によって結びつく、もう一つの共同体を想起することは夢物語だろうか。たとえば宮城県女川町では、伝統芸能の獅子舞を復活させた地域から高台移転の合意形成が始まったという報告もある。文化とは、本来このようにして、地域の継続性を保ちつつ、さらにそこに変革を促す役割も同時に果たしてきたのではなかったか。
個々の価値観によって緩やかにつながる出入り自由な、そして小さな共同体を幾重にも作り、ネットワークを広げていく。その小さな共同体でヽ小さな経済を回し、地域に誇りを持って生き、経済をも少しずつ活性化していくことは、B級グルメや地域のゆるキャラの成功を見るまでもなく、その夢は、そこかしこに出てきているように思う。私はその小ささにしか、日本の希望はないと考える。