丸山健二「人生なんてくそくらえ」より |
・親が在っての自分という発想は、猛毒だ。
・親の人生は親が全責任をもって当たればいいことで、子にその一部を担ってもらおうという考えは醜悪以外の何ものでもない。また、子も、しかりだ。
・”そもそもこの世におけるおのれのこうした形の存在をどう思う。こうした憐れな命が神仏のたぐいからの聖なる贈り物といえるか”なぜなら、だいそれた命題にきちんとした答をだすことが眼目ではなく、その狙いはこの問題を認識し、直視し、自分なりに考えてみること自体にあるのだから。
・かつての人間は、ほかの野生動物と同じように、たとえ寿命は短くても、危険だらけの環境にあっても、ただ生きているだけで充実感がえられるような幸福な存在だった。
・(政治家)かれらの最大の目的は、必要以上の「いい思い」であって、ほかには何もない。
→政局とやらを見ていると、そうとしか思えないよね。
・だから、自身のなかに強者を求める以外に行き延びる道はないのだ。
・本当の頭の良さについて云々する場合は、まず真っ先に意志の力を問題にすべきだ。おのれの力のみに頼って生きてゆこうとする意志の有無によって頭の善し悪しが大きく分かれる。
つまりは自立の度合いがそれを決めることになる。反自立の生き方は、即、明晰さの欠如につながる。そして、自立とは、弱い人間であることを百も承知の上で、果敢に強い人間をめざして奮闘することでしか培えない。
・この国ではむかしから夫と子どもへの至れり尽くせりの世話は良妻賢母の鑑という扱いでさかんにもて囃されてきた。だが、その屈折した美学こそが日本の男子を駄目にし、子どもを駄目にし、ひいては女自身をも駄目にし、とどのつまりは日本人全体を駄目にした元凶なのだ。
・人間らしさについて要言すれば、知性の側に身を置くことだ。そして知性とは。合理的な思考を指し、つまり、理屈に生きることだ。これは、感情や本能に忠実な生き方とは対極な生き方を意味する。
・思考とは、要するに理屈のことだ。
・理屈こそが最強の武器なのだ。
・ 理屈を忌み嫌い、情緒を優先させ、あとは本能に従うばかりの生き方は、楽かもしれない。また、理に走ると角が立つという、むかしながらの言い回しの通り、人間関係がぎくしゃくしたものとなり、冷たい人間と見なされ、敬遠され、孤立化を深めることになる。
また、粋とか野暮とかの日本人独特の、本音を敢えて口にしないことをよしとする、異様な価値観に真っ向から異を唱えることになり、日本人が最も恐れてやまない、仲間外れ、村八分という、子どもじみた陰湿な嫌がらせの集中攻撃を受けることになる。
だが、個性や、自立や、アイデンティティーなるものを口先だけのものとせず、本気でそれを求め、しっかりと身につけ、付和雷同から離脱して、新しい地平をめざそうとするならば、真の自我を証明してやまない理屈と共に独立独歩の道を歩むべきだ。
ちなみに、脳を存分に働かせている人間であっても、せいぜい脳全体の二割か三割程度しか使っていないという説が有力だ。随分ともったいない話ではないか。
いくら使っても使いきれないほどの脳を、しかも、使えば使うほど鋭さが増すと言われている脳を、ほったらかしにしておく手はない。人間だけに特有の素晴らしい能力をほとんど手つかずのままにして丁生を終えるなんて、まさに愚の骨頂というものだ。
頭の苦し悪しは、脳を使うことの醍醐味に気づくかどうかみ差であって、脳の質や量の問題ではない。
・脳を使わない癖をつける原因はいろいろあるが、なかでも最大なのは親が注ぐ過剰な愛だ。
・お人好しとは愚者の代名詞にほかならない/ゆえに、日本人を賢いとするのは誤りだ/好人物とお人好しをいっしょくたにしてはならない。
・「汝を養うものが汝を滅ぼす」
・裸一貫で社会へ出て行かなくてはならない、せいぜい学歴だけを頼みの綱として世間の荒波のなかへ乗り出して行かなくてはならない、ごく普通の若者は、とりあえず勤め人になる。というより、あたかもほかに選択肢がないかのように、迷うことなくサラリーマンになる。迷う理由はどんな種類の勤め人になるかという、せいぜいその程度でしかない。
資金なしでもやれる自営業がいくらでもあるという事実に、なぜか目を向けようとしないのだ。 それ以外に道がないかのように、常識中の常識でもあるかのように決めつけ、脇目もふらずに、まっしぐらに勤め人の世界へと入って行く。まだどんなことにも挑んでもみないうちに、実際にはヒントにも何もならない、学校の成績なんぞを参考にして、自分はこの程度の人間であると勝手に判断し、才能などひとつもない、ありふれた人間のひとり、凡人のひとりという答えを出してしまい、勤め人で充分と確信する。そうかと思うと、勤め人が精いっぱいの親から生まれてきたのだから、それ以上になれるはずがないという後ろ向きの発想のもとに、早くも人生の門を自ら絞りこむ。これは大いに問題だ。