フランソワーズモレシャンさん 朝日新聞寄稿 |
ジア系の観光客といえば、かっては圧倒的に日本人でしたが、今は韓国人や中国人が目立ちます。メイド・イン・ジャパンばかりだった家電も、韓国・中国勢が目立っています。自動車は優位を保っていますが、いつまでも安心できごものではありません。
経済力に陰りが見られるのも確かでしょう。そんな時だからこそ円高に危機感を募らせるのでしょう。
しかし、私は円安や円高にかかわらず、日本は世界でもまれなほどの精神文化の成長を遂げていると思います。海外への関心が低くなったと嘆く人もいますが、忘れていた日本の文化への関心が高まったともいえます。
円高になると輸入品の価格が安くなり、海外旅行、あるいは海外投資も盛んになるでしょう。円安になれば国内に目を向けて、円高になれば海外へ目を向ける。この柔軟性こそ日本人の特質で、成熟の証しではないでしょうか。
円高で大きな被害を受けている、特に中小企業の方々には深刻な問題でしょう。一方で、円高の恩恵を受ける企業もあるでしょう。私たち個人は、不景気論に惑わされるよりも、円高のメリットを生活に取り入れてみたらいかがでしょう。いつもと違う幸せを探してみましょう。「温泉で日本酒」という幸せを「フランスでワイン」にしてもよいじゃないですか。そんな生活スタイルの柔軟さが、幸福に結びつくと恩います。
私はドイツ軍による占頷下の苦しさを少女時代に昧わっています。景気の変動なんて戦争と比べたら、ちっとも怖くありません。大切なのは安心できる毎日の小さな幸せです。家族や友だちと笑って食事できること。
日本ほど調和と安らぎがある国は他にありません。国民性もあるのでしょうが、民族や宗教の対立もない日本は社会的なストレスがなく、サービスと笑顔と優しさにあふれています。もちろん、日本にも暗いニュースはたくさんあります。もう少し弱者に優しい社会になれば、日本は「幸せナンバーワン」になれる国だと思います。 (寄稿)