消費税を考える 吉川 洋氏 日経 |
97年、橋本龍太郎内閣の下で消費税率が3%から5% に上げられたときの記憶はいまだ鮮明だ。しかし97
年と今の日本経済では大きな違いがある。不良債権問題という「地雷」を現在は抱えていないことだ。
97年にはアジア通貨危機による輸出の激減という予想外の問題もあった。景気の動向は確かに重要なチェックポイントではあるが、消費税引き上げの夕イミングを計る上で最大の間題は実は別のところにある。
既に説明した日本の財政・社会保障制度の現状からすると、消費税を上げる場合は実質的に「社会保障目的税」とすることが望ましい。消費税を支払うことで、国民は通常の消費財とは異なる社会保障サービスを「買う」ということが明確になる。消費税が上がらなければ、その分、人々は外食や旅行をしたり薄型テレビを買ったりするか、あるいは貯蓄するに違いない。だが個々人が行う消費とは別に、我々の厚生水準(幸せ)は、医療・介護サービスなどにも依存している。老後の安心は社会的な貯蓄といえる公的年金に大きく依存する。
社会保障にリンクされた消費税の本質的な役割は、消費の種類を変える、すなわち個々人が行う日常の消費から国民全体でプールした社会保障サービスの購入へ消費パターンを変えることで、国民の平均的な厚生水準を上げるところにある。したがってそれは必ずしも消費を冷え込ませ景気に悪い影響を与えるわけではない。
よしかわ・ひろし 51年まれ。エール大博士。
ものを買えば買うほど、社会保障費は豊かになるわけだ!
イイ循環をしてくれれば、良いのだが・・・でも、そのカラクリをしっかり説明しないといけないですな。