悩みと縁のない生き方 スマナサーラ著 本編 |
過去を追いゆくことなく また未来を願いゆくことなし
過去はすでに過ぎ去りしもの 未来は未だ来ぬものゆえに
現に存在している現象を その場その場で観察し
揺らぐことなく動じることなく 智者はそを修するがよい
今日こそ勤め励むべきなり 誰が明日の死を知ろう
されば死の大軍に 我ら煩うことなし
昼夜怠ることなく かように住み、励む
これはまさに「日々是好日」と寂静者なる牢尼(むに)は説く
・しかし、驚くことに「現在」という時間はほとんどありません。
私たちは、「今、何をするのか?」ということにはまったう無関心でして、今は最悪、大失敗をして生きているのです。それでは、「過去」も「未来」もぜんぶパーになってしまうでしょう。
・つまり、現在のことは何も知らないのです。「今日はこうだった、ああだった」「明日あれをやります、これをやります」など、寝付くまでそればかりです。・・・現在のために2、3秒も使っていないのです。
・妄想というのは、過去にも将来にも関係がありません。何にも関係がないのです。何の具体性もないのです。一時間のうち、我々は過去のことを考えたり、将来の夢を見たり、それから妄想するのですから、結局、時間は足りなくなります。現在のことは考えないのです。
・危険な忘れもの
①命とは短いもの
一回しかないこの瞬間を大切にしなければならないのに、私たちは思考や妄想に浪費して、この瞬間を大切に生きていないのです、その瞬間で妄想しているから、時間が無駄になるのです。
②「忙しい」というのは錯覚
いつでも今の時間で、瞬間で、できることは、「一つ」しかありません。いつでも、今の一分で、一秒で仕事は一つしかないのです。二つ、三つ同時にはできません。
忙しいというのは、錯覚です。「忙しい」と思うのは、いつくかの仕事をさぼったからなのです。さぼったものは、もう再生できません。
③我は死なない
計画をたてるのは、「我は死なない」という前提があるからです。時間をかけて計画を立てても、実行しなくてはいけないのは「現在」です。
・一回しかないチャンスと言ってしまうと、
「チャンスは一回しかないのだ」と勘違いする可能性があります。そうではありません。一回しかないチャンスが、ずっと続けて現れるのです。一つとして同じものではありません。
・私たちは、この「怠け」という大変な問題があるのです。なぜ怠けが出てくるのかといえば、「後でできる」と思っているからです。しかし、後にはできないのです。人生は短いのです、同じチャンスは一回しかないのです。
・仕事に優先順位をつける。一番大切なことを、今、行う、その結果、三番目のことができなくなったとしても、それは構いません。
・世間と仏教の「怠け」の定義
世間の定義 いまやるべきことをやり尽くさない人
仏教の定義 今の瞬間で生きている自分に気づいていないこと
・つまり、私たちは感情で記憶してしまうのです。・・・・私たちが思い出す過去は正しくありません。いい加減で、曖昧なものです。役に立つものではなく、足かせになる感情・妄想なのです。「過去にいくなかれ」というブッダの一言に、どれほど仏教の中身に入っているのかを、私は皆さんに伝えたいのです。
・将来の夢に惑わされると、現実は見えなくなります。将来の計画に凝り固まると、性格は頑固になり、柔軟性を失ってしまいます。
・「人生を瞬間でみる」ことを、実践する方法を教えます。
現在と考える時間が長い人の成功率は、極めて低いのです。時間が短くなればなるほど、成功率は高くなり、確実になります。「今、現在」という言葉にあてはまる時間が短ければ短いほど、人は成功するのです。
・今の「一分」で解決できないことはない。
今の一分だけなら、あなたにできないこと、乗り越えられないこと、解決できないこと、悩み苦しみの原因になることが、何かあるでしょうか?今の一分で解決できない問題は、ひとつもないのです。今の一分で成功できないことが、一つも存在しないのです。
・悩みはどうして生まれるのかというと、過去の妄想で、将来の期待感で、現実には何もできないことを考えるから生まれるのです。
・瞬間、瞬間、生滅・変化してゆく現象を発見する。
「自我」も、妄想概念だと発見する。
欲・怒り・嫉妬などは、妄想の産物だと発見する。
すると、一切の煩悩(汚れ)から解放され、完全たる解脱に達するのです。
「今」という時間が「瞬間」にまでなった人が、即座に、悟りに、解脱に達するのです。
・明日まで生きられるといいう保証はありえません。我々は「明日は死ぬわけがないでしょう」という推測で生きているのです。それを私は「私は死なないという前提だ」と説明したのです。
死なないという前提で生きる人は、死ぬ準備を何もしないのです。確実におとずれる死が現実になったら、極限の恐怖感におちいって頭がおかしくなるのです。
・励む人、頑張る人、精進する人、怠けない人、怠らない人とは、今の瞬間で行うことを実践する人なのです。日夜、過去にも囚われることもなく、将来を悩むことなく、今という瞬間を現実的に生きるならば、その人には「日々是好日」なのです。
・「なすべきことは今日、行う。明日死なないとは限りません」
・やるべきことは、今日やりなさい。
明日死ぬかもしれません。
命が短いことをよく知って、今、頑張りなさい。