■格差社会論はウソである ビジネス選書&サマリーより |
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■■ ビジネス選書&サマリー
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■今週の選書
■格差社会論はウソである
■増田悦佐/PHP研究所
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日本の未来はそんなに悲観的か?
【1】
マスコミに流布されるのは、日本がどれほどダメかという議論ばか
りだ。そう信じ込ませようとしている社会グループがあるからだ。
一つは財務省の役人、もう一つはマスコミを支配する知識人たちだ。
知的エリートたちは焦っている。世界中ほとんどの国で、知的エリ
ート層が大衆をコントロールしているのに、日本ではその知的エリ
ート階級が、崩壊しているからだ。
だから、自分たちの存在価値を示すために悲観論を唱え脅しつけて
いる。そうして大衆を支配下におこうとあがいているのだ。一般的
に、世界中どこの国でも知識人・文化人は危機と悲観論を好む。
彼らは「一般大衆を教え導いてやらなければならない」という選民
意識を持っている。また、大衆の側も戦争などの異常事態や、将来
が暗いと脅かされたりすると、彼らの話をおとなしく聞く。
ただ、日本の知識人・文化人は、自分たちの経済的豊かさや社会的
地位、知的能力に自信がない。欧米で流行している恐怖キャンペー
ンを真似するだけだから、つい極端なことを言いがちなのだ。
【2】
もちろん、日本の現状は手放しで礼賛できない。名ばかり店長とし
て過労死した青年、生活保護を受けられず餓死した中年男性など、
社会的公正に関する憤懣があちこちで噴出している。
こうした現実に立ち向かおうとしない格差社会論批判は論外だ。た
だ、それ以上に大切なことは、この現実にどう立ち向かうかだ。方
法は2つある。
一つは「日本は悲惨な現実を放置するひどい国だ」と自己憐憫の泥
沼に沈み込む道だ。これは社会正義のようで通りがよいが、統計な
どをしっかりチェックしないと、すべて掛け値なしの真実と思い込
まされてしまう。要注意だ。
もう1つは「日本はなんと要求水準の高い国か」と新鮮な驚きで、
要求にどう応えるかを模索することだ。課題は困難だが、積極思考
で正面から取り組めば、世界一の国を作るための条件は整っている。
【3】
生活保護を無理やり辞退させられたため飢え死にしたなどという事
件が起きるのは、言語道断だ。しかし、それは日本だけで起きてい
るわけではない。世界各国でも、とんでもない事件は起きている。
人道主義的には、こういう問題で数値データの国際比較をすること
は不愉快かもしれない。だが、たとえば日本は、先進国の中で極貧
生活を余儀なくされている人が最も少ないのも事実だ。
欧米では、国民の1~2割が極貧層を占めている。それに対し、日
本はそれを4~5%に抑えている唯一の先進国なのだ。最近、話題
の地域間格差も、世界的に見れば日本は折り紙つきの優等生だ。
OECD27カ国の統計では、日本の地域間格差は、ジニ係数ベース
で最小のスウェーデンに次ぐ2位だ。直近の数値では、さらに格差
が縮まっている可能性が高い。
それでも、日本では地域間格差が深刻な問題だとされている。それ
だけ日本人は、要求水準の高い国民なのだ。
【4】
世界約200の国や地域の中で、人口が1億人を超えているのは中国、
インド、米国、ブラジル、日本など11カ国だけだ。日本と米国以外
の9カ国は、国民1人当たりの国内総生産が日本よりはるかに低い。
国の経済的、社会的、文化的豊かさなどについて国際機関からさま
ざまな指標が出されているが、それを読むにあたっては、この11
の大国とそれ以外の国や地域の二つに分けて考える必要がある。
なぜなら、経済や外交など、あらゆる問題について、大国は小国よ
りもはるかに難しい答えを求めなければならないからだ。
そうした中で、世界平和への貢献度や、経済への影響など、様々な
国際指標を見ると、日本はこの「1億人クラブ」内で圧倒的な優等
生なのだ。