立命館大学院メルマガより |
医療を問う
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昨年は医療問題が表面化した年であった。妊産婦の受け入れ拒否、病院の廃業など、わ
れわれユーザーの感覚からは驚愕の事件が次々に起こった。門前市を為す病院、救急外来
の受け入れを病室満室を理由に拒否する病院。外来では2時間待ちで15分診察、入院して
も巡回診療と点滴、まずい食事でも立派な白亜の建物というイメージの病院がどうして廃
業するのか。顧客満足のためしのぎを削るマーケティングの世界にある消費者からは病院
は利益を上げているにちがいないというのが通常の感覚であろう。次のデータを確認いた
だきたい。
平成18年度病院管理指標より (厚生労働省HP一般病院405データ)
経常 病床 患者1人あたり 外来患者1人あたり
病院数 利益率 稼働率 1日入院収益 一日あたり外来収益
黒字 297 6.0% 77.6% 35,600円 10,300円
赤字 108 ▲6.4% 70.6% 30,700円 8,700円
黒字病院と赤字病院の差をご確認いただきたい。病床稼働率の差はわずか7%だ。入院収
益や外来収益もわずかの差でしかない。その他の指標も黒字と赤字では確かに黒字病院の
方が生産性は優れているがその差は思ったほど大きくない。その原因は何か。日本の医療
では収入(病院の場合売り上げではなく医業収入)は診療報酬制度に依存しており、2年に一
度の改定に右往左往することになる。工夫の余地が大きいのは費用項目である。収入のド
ライバーである医師、看護婦の雇用に失敗すれば経営リスクは一気に高まる。つまり、経
営の自由度が低い中で制度改定にへきへきとした病院後継者は病院を捨ててクリニック開
業へと向かうのである。
1日入院3.5万円、外来1万円で15分の診療は割高か。高級温泉旅館と比較はできない
が3割負担の消費者には利益が上がっていると思うのも当然だろう。心臓バイパス手術が
2500万円という高額の米国に比較すれば日本全国どこでも同様の医療が低負担で受診でき
る国民皆保険制度は優れた制度である。ただ、今はいつでも受診できるという前提が崩壊
しつつあるが。医療再生のための処方箋はビジネススクールが担うべき課題である。
(医療ファイナンス講座担当 三好秀和)
教育も医療も難しい問題を抱えてしまったが、
どうして、こう、行き難い時代を迎えてしまったのか?まだ、分からない。